医療法人一元会 松井山手西川歯科医院 ペリオ・インプラントクリニック インビザライン矯正

2019.06.06歯周外科治療とはこういうこと

進行した歯周病に対して、スケーリング、ルートプレーニング、洗浄、消毒、局所的抗生剤投与行っても改善しないことが多い。
概ね、初期治療終了後の再評価でポケット深さが5mm以上ある場合、前記のような処置を繰り返してもそれ以上の改善は望めない。
そこでどうするのか?
歯周外科治療に移行すればいいのだが、そう簡単にはいかない。
まず、それまでの患者さんの理解度、協力度の評価が非常に重要。
自身の病状に対する理解、メインテナンスが確実に行なえない状態で、歯周外科治療移行はありえない。
無理して歯周外科治療行なっても、一時的には良くなるかもしれないが、必ず問題再発するので行わないという判断もありえる。
また、全身状態、服薬状況、年齢も非常に重要。
だから、スケーリング、ルートプレーニング、洗浄、消毒で経過観察行わなければならないケースも確かに存在する。

今回の本題。

歯周外科治療移行条件を満たしていても、行われず、状況がどんどん悪化し、相談に来院される方が後を絶たない。
メインテナンスと称しても結局、実質何もせず、できず、ズルズル状況が悪化し、ニッチもサッチモいかなくなっての相談。
理由は単純、歯周外科治療は歯科医なら誰でもできるというものではないから。
知識も、技術も必要。
膨大な機材も必要。
そしてその機材が非常に高価。
特にマイクロ歯周外科機材など、例えばピンセット1本10万、ハサミ20万、持針器20万、、、、、そしてそれらが機材も数種類あり、1日何回もオペあるさらに数セット必要となる。
マイクロスコープだの、CTだの装備自慢していても、歯周外科治療の機材が準備されていない歯科医院など、いったい何の治療を行っているのかお笑いでしかない。
毎月のレセプトからも、一定数、確実に歯周外科治療を行っている歯科医院などゼロに等しいらしい。
歯肉をちょっとばかし切除して歯周外科と思っている歯科医もいるが、そのようなものでは全くない。
一口に歯周外科治療と言っても様々な目的、方法があるが、日本の保険診療においての歯周病に対する処置は世界的には通用しないFOP(フラップ・オペ)という用語で一括りにされてしまっているので、本当のところよく分かっていない人が多いのではと思わざるをえない。
フラップ=歯肉弁?の手術?、意味不明である。
いわゆるモデファイド ウィドマン変法という典型的な歯周病治療、歯周ポケットリダクション目的の治療を指す場合が多いと思うが、保険診療においてはその術式に明確な規定すらない。
歯周病に対しての歯周外科処置の目的は、歯肉の奥底に残存する縁下歯石、壊死セメント質、汚染物を明視下において徹底的にデブライメント、歯根を滑沢化し、必要に応じ歯槽骨の形態を修正、健全な歯周環境の再生を促し、剥離した歯肉弁を適切な位置で縫合すること。
当院では保険適応で行っていないが、メンブレンと人工骨移植、エムドゲイン、リグロス等の再生因子を投与す場合もある。
また、この歯周外科治療と組み合わせて行う補綴治療を歯周補綴というのだが、ここまでのプロセスを無視し、本来保存可能な歯牙を抜歯し、お粗末なインプラント治療が多いのが今日。

歯牙を保存する努力もせず、力量もない歯科医がインプラント治療行うべきではない。

これと言った説明もないまま、ダラダラ、メインテナンスと称して毎月毎月来院させていても一向に状況が改善しない場合、要注意。
結局何も治療できず、状況が悪化しているので再考を要す。
歯周外科中の写真。
以前にも出したが、患者さん説明用にスタッフにスマホで撮影してもらったため不鮮明なのはお許し願いたい。
フラップ形成、剥離した状態。
これから歯根面デブライメント、歯槽骨、フラップ弁の形成後縫合。文字にすると簡単だが。
IMG_0009.jpg

繰り返しになるが、日本人成人の80%は歯周病に罹患、その中の半分、すなわち成人の40%は中等度以上に進行=歯周外科治療の適応で歯牙を保存、守ることが可能な場合も多いと思われるが、実際にそこまでの処置が行われるのは1%にも満たない。
歯科医院側、患者側、双方に問題がある。
歯周病治療も満足にできず、インプラント治療や様々な高度な治療などできるはずもない。
事実、高度に歯周病に罹患した歯牙のとなりに平気でインプラント埋入されているケースで相談に来院される場合がちょくちょくある。
先日もインプラントとなりの歯肉が腫れ押さえると膿が出てくるが、通院している歯科医院では「様子見ましょう」で対応してもらえないとの相談があった。

もし、歯周病治療を本格的に行いもせず、毎月毎月定期検診と称しての無駄なクリーニングや抗生剤の投与が続いているなら疑問に思うべきであるし、そのような医院でのそれ以上の高度な治療は危険ですらある。