2018.06.23患者さん目線、患者さんに寄り添う治療とは?
今までにも何回か書いてきた。
患者さん目線、患者さんに寄り添う治療と謳い文句にし、患者さんにすり寄る医療関係者は多い。
患者さん自身も、「さぞかしすばらしく、優しい治療を行ってくれるのだろう」と勝手に誤解する場合も多い。
私は昔からこの文言に激しく違和感を覚える。
果たしてプロがアマチュアと同じ目線で治療経計画を立案したり、実際の治療行為を行っていいものかどうかと。
プロとアマチュアにはハッキリとした一線が存在するはずだが、その境界がネットをはじめとした情報過多の今、不勉強のプロと、誤った、そして消化不良の情報振り回されている患者さんとの間で曖昧になっきているようにも思える。
プロなら、できることはできる、できないことはできないとハッキリ説明し、ある意味、冷徹に診断を行い、あとは正確無比な機械がごとく治療すべきなのではと考えるのだが。
それができないなら、プロではないということ。
実感する局面は多い。
余命幾ばくもない方に、効果が不明で高額な保険外診療を勧めて社会問題になっていることを、ご存知のかたもおられるだろう。
無論、治療において患者さんの意向を重視することは非常に大事である。
しかしながら、医学的常識を超えた処置、明らかに問題を放置したり、将来的に問題発生することをそのままにした状態での治療は、余程の事情がない限りありえないと思う。
最近、何かしら、他の医院では客寄せのための「なあなあ」、適当にお茶を濁した治療が多いように思えてならないし、それを「優しくて、良い治療」勘違いしている患者さんも多いが、結局そのような人は「ババ」を引いてしまうが、致し方ない。
責任の所在はどこにあるのか?
私に言わせりゃ、どっちもどっち。
日本独自の保険診療、世界的標準治療、保険適応外の治療含めても治療方法が星の数ほどあるわけではない。
ましてや、ベストな治療というならベスト、1つしか無い。
さらには患者さん自身のリテラシーが低いと、ここで「怪しい治療」につけ入るスキを与えてしまう。
まあ、それも致し方なし。
無論、もっと大前提として、歯科医自身(歯科に限らないが)に将来予測や、困難な治療をやり遂げるだけの実力が無いことは論外であるが。
したがって、治療というものにはできる、できないという一線というものがあることをご理解いただきたい。
「患者さんに望まれ、患者さんに寄り添って、患者さん目線で適当な線での治療」をゴリ押ししても、必ずその患者さんにしっぺ返しがくるのだが、そのようなリスクを背負うことは避けたい。
私にとってそのようなリスクは、非常に複雑な治療よりも遥かにリスクなので。
安易に考えている人もいるが、治療自体、特に当医院のように非常に複雑かつ複合的ケースが多い場合、そんなに生易しいものではなく、中途半端な事を行うなら確実にリスクを抱え込むことになるので、行わない方がマシな場合も多い、ということをご理解いただけたらと思う。
したがって、あまりにも治療に対する理解が得られない場合、私の診断と患者さんの意向の乖離が激しい場合、治療自体をお断りする場合もある。
無理強いすることはおかしいし、いくら問題提起し、説明しても理解を得られないなら、無理して行う必要もなく、
説得めいたことまでして治療行う必要もない。
あくまでも患者さん自身の問題なのだから、説明を理解の上、自分で結論出していただきたい。
正直、このケースには手を出してはいけないという場面にも遭遇する。
目先のもの欲しさでこのようなケースに診断力、技術力も無いのに安易に手を出したものの、泥沼にはまり込み、時間的に振り回され、患者も歯科医も不幸になってしまっている話はよく聞く。