医療法人一元会 松井山手西川歯科医院 ペリオ・インプラントクリニック インビザライン矯正

2018.06.21痛みと腫れが取れない・・・根管治療の話

他医院において前年10月より左下7部痛みと腫れの治療を延々行うも、全く改善せず、抜歯宣告を受けたので、当医院に相談に来られた。
術前レントゲン写真によると、、、、ファイルが破折して残存している、、、、、何の説明も無かったそうだ。
根尖部には大きな病巣。
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複雑な根管形態で、フィン、イスムスが存在、郭清、洗浄が全くできていない。
マイクロスコープによる写真。
DSC_3791.jpg
左下が破折ファイル。
何もマイクロスコープを用いなくても、拡大鏡でも確認できるレベル。
破折ファイルは簡単に除去でき、除去すると、大量の膿が出てきた。
破折ファイルが「栓」のようになっていたみたいで、これでは痛みも、腫れも引かないだろう。
2回目のアポイント時には、自覚症状は消失、膿も出ていなかったので洗浄、念のため3回目に根管充填処置を行った。
私は根管治療薬に頼るような治療はしないし、実際、使用の有無による治療成績に差がないことはエビデンスとして出ている。
まあ、気休めに水酸化カルシウム製剤を使用するが。
水酸化カルシウム製剤は魔法の薬みたいに考えている歯科医も多いが、これも、洗浄を確実に行って水酸化カルシウムを除去しないと緊密な根管充填ができないというリサーチもあるので、安易な使用は禁物。

術後レントゲン写真。
DSC_8589.JPG
1ヶ月後レントゲン写真。根尖部の病巣は縮小している。
近心根が複雑な形態をしている。
この後もう少し経過を観察し、問題ないなら補綴治療を行う。
本当は1年位経過観察したいのだが、今回は保険診療のため、そうもいかない。
保険診療のため、破折ファイルの確認には念のためマイクロスコープを用いたが、後のプロセスには用いていない。
マイクロスコープがあると誰でも高度で精度の高い治療が可能という考えは明らかに間違い。
使いこなせる技術、知識の方が大事。
何度も書くが、高度な医療機器が単なる客寄せになっている感が最近特に多い。

さて、このケースを行った前医であるのだが、患者さんによると人気の歯科医院であるらしい。
念のためその医院のWebを見てみると、治療機器のご自慢ページと、意味のない肩書、金で買える肩書ご自慢ページのオンパレード、「名医紹介本」掲載実績、メディア露出自慢などなど、よくあるパターン。
ご自慢のマイクロスコープは、安モンで本格的な治療には使えないシロモノ、この辺りは患者さんには理解しづらい部分。
この患者さんもそのWebにつられて受診したようだ。

根管治療には自信があるそうなのだが、実際には、カリエスでない部分もムダに大きく歯牙が削られている(根管口が分かりにくかったのか?)、隔壁を作っていない(すなわちクランプすらかけられないので、ラバーダムもかけていない)、単なるストッピングの甘い仮封、それに、そのままの破折ファイル、、、、、。
だいたい、根管治療は2〜3回で終了すべきであり、効果がないなら他の手段を考えるべきで、ズルズル治療を長引かせることはかえって悪化するだけであるし、予後も極端に悪くなる。
的確な処置を2〜3回行っても改善しないなら、次のステップとしての外科的歯内療法、残念ながら最悪抜歯も選択肢となるが、歯科医の技量に負う所が大きく、特に深い部分までの垂直的破折は保存不可能となる場合が多いが、治療可能な場合でも、矯正治療、歯周外科治療が必要となるため、歯科医なら誰でも治療可能というわけではない。
それらの技量がないなら、即、抜歯宣告となる。
抜歯→インプラントを薦められるという流れはよくある話であるし、歯科医院はその方が確実に儲かる。
抜歯宣告を受けたなら、その歯牙が本当に保存不可能なのか、ズルズル何ヶ月も根管治療が長引いている人は要注意である。
私の場合、インプラント治療は多いが、歯牙保存の診断基準、治療基準があって、歯科医は歯を残してナンボという事もあるので、可能な限り保存を試みるが、ダメなものはダメという考えである。

まあ、日常的によく遭遇するので、そんなモンなんだろうし、驚きもしない。
根管治療専門医、歯内療法専門医と称する歯科医でもこんなレベルの治療も多いが、国家資格ではなく「自称」の域を出ないので、言ったモン勝ち。
キチンと学んだ歯科医が可哀想であるが。

私は、患者さんに対して、前医の悪口は一切言わない。
淡々と事実を説明、私自身の結果を出すのみである。
前医で延々と治療して症状取れなかったものが、当医院での2回目の治療で消失したという事実のみ。
後の判断するのは、患者さん自身である。