医療法人一元会 松井山手西川歯科医院 ペリオ・インプラントクリニック インビザライン矯正

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2018.05.28前歯部インプラント+オールセラミックスクラウン+インビザライン矯正 その1

幼少時より来院いただいている患者さんである。
患者さんは今から約15年前の小学生時、不幸にも外傷で上顎左右1を脱臼してしまった。
非常に薄い唇側歯槽骨も歯牙にひっついた状態であった。
受傷後比較的短時間のうちに当医院受診されたため、当時まだ一般的ではなかった水酸化カルシウム製剤、MTAセメントを用いて根管充填行い、再植を行った。
しかしながらマイクロスコープ下で多数のクラックを確認できたため、将来的予後不良を保護者の方にお伝えし、保存不可、抜歯となったあとはブリッジ治療もしくはインプラント治療となるが、いずれにせよ、成人するまで待った方がよいと説明した。

当時、ファイバーコアならびにレジン接着剤の性能も評価も今ひとつであったので、メタルコアを入れざるをえなかった。
今日的にはマイクロクラックの入っている歯牙に対してもファイバーコアと接着セメントによる術式がある程度浸透してきているが、クラックが深部にまで到達しているようなケースは予後が良くない場合、即ち最終補綴物装着後短期間で破折してしまうよなケースも散見されるため、確実に数年以上保存可能と予測される場合以外あまりお薦めはしていない。
クラックが浅部で留まっているなら、エクストゥルージョン+歯周外科処置で助けられる場合も多く、この様な場合の予後は経験上良い事が多い。
どういう訳かこのような治療が行われているのは日本だけであることを付け加えておく。
歯を残せますというと歯科医院としての「売り」ができるし、それに飛びつく人もいるということ。
長期の予後があるという歯科医もいるが、単に機能させていない場合がほとんど。
「歯」は飾りでついているものではなく、あくまでも咀嚼器官の一つなのであるから、その部分で噛めなければ何の意味もない。
お気に入りのお茶碗が割れました、ホームセンターで瞬間接着剤でひっつけました、また、使ったら直ぐ同じところで割れました、と同じである。
観賞用の高価な茶器を金継ぎで修復する事とは全く別である。
相変わらずの構図である。

さて、脱線したが、その後しばらくメインテナンス、経過観察を行っていたのだが、とりあえずの再植は成功と判断したので、補綴物の作製、装着を行い、さらにメインテナンス、経過観察を続けていた。
その後も、遠方へ転居されたのだが、症状無きまま、メインテナンス、経過観察を続け、大学入学まで成長されたのだが、その頃より無症状ながらごく僅かなサイナストラクト様の形成(排膿はしていない。)が認められ、歯肉の退縮、レントゲン写真上でも、歯根吸収を疑う微小陰影が出てきたので、クラックの増大も予測されたため、以前の説明の内、インプラント治療を選択されることとなった。
術後写真。
DSC_4476 2.JPG
また、歯並びも以前より気にされていたのだが、早急に治療開始せず、脱臼歯牙も含めてトータル治療とした方がキレイに仕上がると説明済みであったため、インビザラインによる矯正治療も同時進行となった。
最初に、抜歯予定歯牙のエクストゥルージョン行い、歯槽骨の、歯周組織の増大を図りつつインビザラインで矯正治療を開始。
事前のCTにより、唇側骨が非常に薄く、一部歯根が露出していることが分かっている。
予測通り、歯根破折による周囲歯槽骨の吸収がおきていた。
インビザライン全ステージの3/4経過時点でかなり歯列不正が改善されたのだが、消失していたフィステルが再発したため、矯正治療は一時中止し、その時の最終アライナーで保定、インプラント治療に移行。
左右1を抜歯と同時にインプラント埋入、事前のCTから唇側歯槽骨の欠損が顕著であったため(事前のエクストゥルージョンで1/2程度は増大できた。)、自家骨+人工骨+チタンメッシュプレート+吸収性メンブレンを用いた骨移植、増大を行った。


続く。