医療法人一元会 松井山手西川歯科医院 ペリオ・インプラントクリニック インビザライン矯正

2017.12.04インプラントVS歯牙移植

表題の件、以前にも書いたことがあるが、最近立て続けに相談があったので再度書く。
インプラントはともかく、歯牙移植とは、欠損部位へ自身の「余っている」を移植し、機能、審美回復を行おうというもの。
来院された患者さんは、いずれもネットで調べて歯牙移植希望だったのだが、、、、、、、。
下顎前歯部先天的欠如部位に親知らずを移植希望といってもねぇ。
矯正治療も必要で、大まかな治療費の話をした時点で終了。
もう一人は、欠損部位が多数あるのだが、ドナーの歯牙がない。
矯正治療、インプラントを含めた治療となるとコスト的なハードルが、、、、、、。

さらにもう一人の方は、前歯、小臼歯部の先天的欠如、これも適当なドナーが存在しない。
しかも歯列不正もあるので、結局、矯正治療で欠損部スペースを詰め、詰められないスペースにはインプラント治療行うこととなった。

・インプラント治療と歯牙再植治療の私が考える技術的難易度は、同程度。しかし歯科医
 のバラつきは患者さんが考える以上に大きい。
・したがって予後も歯科医の差に負うところが大きい。
 インプラントの予後は術後10年で90%以上と言われているし、当医院でもそれを超
 える予後があると思う。
 歯牙移植の予後は、統計自体のバラ付きが多く、そもそもの分母の数がインプラントと
 比較できない。
 なぜか、移植の専門と称する歯科医はアンチインプラントが多いが、根拠が不明だし、
 そもそも大してインプラント治療を行った経験もない歯科医があれこれケチつけても何
 の説得力無い。
 色々インプラント治療をやりきり、自身の結論としてインプラントはダメというのな
 ら、まだ分かるが。
・CTで診断し、CAD/CAMでドナーの模型を作製し、移植という方法もあるのだが、なん
 でそこまで面倒臭いことを行って移植にこだわるのか、私には分からない。
 コストもインプラント治療に対してのアドバンテージもない。
・インプラント嫌いで移植大好き歯科医は、将来はインプラントはなくなり、ips細胞から
 歯牙を再生させ、移植することになるだろうというが、いったいコストどのくらいかか
 るのか分かってるのか?と言いたい。
 (実験レベルでは歯牙の再生は可能となっている。)
 臨床実験が始まっているipsから再生させた黄斑変性症の治療コストは約1億なんだそう
 だ。
 結局のところ、「歯牙移植」が商売のネタになっていて、何でも鵜呑みにして釣られる
 患者がいるという事。
 確かに、インプラントより歯牙移植の方が対患者受けインパクトは大きいらしい。
・当医院でも歯牙移植をいくつか行った経験があるが、患者さんがメインテナンスに来な
 い場合もあるため、詳細な予後は不明。最長は15年。
・適当なドナーが存在しない場合が多い。即ち、ドナーとなるのは多くの場合、「不要な
 親知らず」であることが多いのだが、その親知らずの大きさ、形態と移植側
(レシピエ ントサイト)の大きさ、形状がほぼ同じでないと移植は不可能。
 前述の大きな親知らずを小さな前歯や小臼歯部に移植することは事実上無理。
・きれいに歯根膜が残っていないと骨移植など、歯周組織再生を併用することが困難。
 このため、余っている歯牙をきれいに抜歯する必要がある。
・コストもインプラント治療と大して変わらず、治療期間は余計にかかる可能性もある。
 これは、単に移植だけではなく、根管治療、矯正治療、補綴治療も行わなければならな
 いため。

移植も治療オプションの一つとして考えるのはいいが、適応が少なく、普遍性、再現性に乏しく、とてもとてもオールマイティーな治療とは言えず、インプラントに対してのアドバンテージがあるとは思えない。

移植好きの歯科医は、歯牙移植は侵襲度の低い治療と言うが、そんなことはない。
抜歯、移植と2ステップになるので、侵襲度が低い、優しい治療というのは疑問であるし、インプラントに対する安価な代替治療というのも間違い。

移植は以上のことを踏まえ、よく考えて頂きたい。