医療法人一元会 松井山手西川歯科医院 ペリオ・インプラントクリニック インビザライン矯正

2017.07.01歯牙移植、再植の幻想

余っている歯牙を別の欠損場所に移植する方法がある。
時々問い合わせもある。
結論から言うと、適応症が非常に少ないし、過去、数ケース行ったが(数年間の予後は問題なく経過したが、その後半分程度はフォロー来院中断のため、経過は不明)、インプラントと比較してあまりメリットを感じない。
当医院の症例のいくつかは本Blogでも紹介。
まず、
1・それほど都合よく余っている歯牙が存在しない。
  過去に、かみ合わせのない歯牙をドナーとする症例を読んだ事があるが、そもそも対合歯がない歯牙を放置し
  ている時点で、元々の治療計画に誤りがある。
2・ドナーサイト(大体が親知らず)とレシピエントサイトの大きさ、形態がほぼいっしょであること。
  これに関しては、どこかのネットで聞きかじった患者さんが、下顎2部先天的欠如部位に親知らずを移植出来ないか
  との問い合わせがあったが、実際診察してみると、大きさが3倍位違い不可能と判断となった。
  鏡でみれば一目瞭然なのであったが。
  この他にも何人か同様のケースに遭遇している。
3・ドナーサイトが強度の歯周病、虫歯に侵されていないこと。
  ボロボロで汚染された歯牙は定着しない。
4・ドナーサイト歯牙がすんなり抜歯できること。
  2と同じく、抜歯行う際に割れたりすると移植できない。
  MTMを事前に行い、グラグラにして抜歯行う場合もある。
5・3に関し、歯根形態が複雑でないこと。
6・レシピエントサイトに十分な骨が存在すること。
  インプラントと違い、骨造成、骨移植が困難。
7・処置が煩雑。
  単に移植するだけでなく、根管治療、場合によっては矯正治療、そして多くの場合補綴治療も必要。
  したがって当医院では保険外診療扱いとさせていただいているが、そこまでコストをかける事に疑問。
  移植を希望する人の殆どが、インプラントの代替治療を安価にと考えている人がほとんどであるが、
  そうはいかない。
8・予後が5年で80〜85%と言われているが、当医院のインプラント98%程度の成功率から考えると非常に分が悪
  い。
9・移植した歯牙は、将来的に歯周病、虫歯に罹患する可能性がある。
10・その他。

インプラントを頑なに否定し、(理由は様々、一応科学的根拠らしきものから電磁波を吸収するなどオカルト的、似非科学的なものまで。)、歯牙移植、再植に力を入れている歯科医もいる。
インプラントより侵襲度が低いという歯科医もいるが、これは全くのデタラメ。
ドナーサイト歯牙を抜歯し、レシピエントサイト骨をドナー歯根形態に形成し移植、根管治療を行い、補綴治療と、
欠損部位に単独でインプラント埋入し、補綴治療行うのとどちらが手間がかかり侵襲度が高いか素人でも判断できるだろう。
インプラントではなく、自分の歯牙を有効活用というと、無知な素人には受けがいいのかもしれない。
インプラントを頑なに否定する宗派、それはそれで否定はしないが、上記のような理由で移植出来ない場合、どのような治療方法を患者さんに提案するのか一度聞いてみたい。
ブリッジ治療なのか、後方に歯牙が存在しない場合はいきなり入歯なのか?いや、そのような場合は本末転倒でもインプラントもアリなのか?そしてそれら治療が本当に侵襲度が低いのか否か。
*当医院での歯牙移植、歯牙再植、それに根管治療等付帯する処置も含め保険外診療となります。