医療法人一元会 松井山手西川歯科医院 ペリオ・インプラントクリニック インビザライン矯正

2017.07.13MTA

MTAセメントというものがあり、神経を保護したり、歯に開いた(歯科医に開けられた?結構多い。)穴をリペアしたりするのに有効な材料である。
非常に高価な薬剤なのだが、組成はカルシウ化合物で大したものではなく、東急ハンズなどでほぼ同成分ののものが1/10以下で販売されており、ボッタクリの値段。

脱線するが、コスト削減のため、ホームセンターなどで本来、厚生労働省の承認、認可が必要な治療器具、機材、材料を購入している歯科医もいると聞く。
そのような事を行う歯科医が悪いのか、全く同じものをふっかけて販売しているメーカーが悪いのか。
過去に数回、レジンコアの芯にゼムクリップを切断して使用したり、単なる木ネジを使用されている患者を診察したことがある。
これはメーカーに調査させたので、歯科用材料でないことは判明している。
概ねその歯科医院(複数)は特定できているが、ここでは書かないし、レントゲン写真も掲載しない。
車もほぼ同じ内容でエンブレム変えただけで価格は倍、でも製造コストは大して変わらずなど、どんな商品でもそんなモノだが、趣味のものならそれでも自己満足という購入理由にはなる。

さて、直接覆髄すなわち神経を保護する場合、感染していないことが大前提になる。
したがって、既に死んでいる神経(神経とは言えないけど)に応用はできない。
Ttansient Apical Break Downとかリバスクラリゼーションとか、ダメージを受けた歯髄が復活する(厳密には神経は再生しない)場合もあるが、混乱を招くので今回は記さない。
以前、深い虫歯で死んでしまった神経に対し、ネットか何だか知らないが、どこで聞きかじった知識を元にMTAを使ってほしいと言われた事があったが、無理である。
死んだ人間を生き返らすことができないように。
私はイタコとかシャーマンではないので。
昨今、「情報」が簡単に入手可能なのだが、逆に振り回される人も多いが、プロの意見は素直に受け入れていただきたい。
お粗末な知識の歯科医も多いが。
それができないなら、セカンドでもサードでもオピニオンをとれば良い。

そのうちに「患者目線の、患者に寄り添う」名医に巡り会えるかもしれないが、私の考えでは、患者目線=素人と大して変わらない知識、患者に寄り添う=高度な治療提案ができない、でしかない。

そんな事より、虫歯をそこまで放置したことを自戒していただきたい。
この場合に限らず、とことん放置しておいて、いざ問題が発生するとその歯牙の保存に固執する人がいる。
何とかなるケースもあればどうにもならない場合もある。
歯科医側が問題を大きくしている場合は、本当にかわいそうだと思うし、何とかしてあげたいと思うが。

いずれにせよ、MTAが、歯科業界のバカの一つ覚え的に、また、正しい術式で使用せず結果が出ないといって廃れてしまうような風習が繰り返さないことを強く望む。

なお、当医院の場合、自費根管治療+MTAパーフォレーションリペア+自費ファイバーコア+プロヴィジョナル+ジルコニアベースオールセラミッククラウン処置を行うと、インプラント治療を行うよりコストがかかる場合もある。
また、治療成功率も予後5年で感染根管治療+パーフォレーションリペアの場合、好条件で概ね80%であるのに対し、インプラント治療はほぼ100%というリサーチも参考にされたらいい。
当医院での臨床成績も同感である。
何でもかんでも残す努力を行わず、行えず抜歯、インプラントを薦める歯科医は論外だが、抜歯を避けたい、自分の歯を残したいとこだわりすぎると、「歯を残せますよ」との甘い誘惑を持ちかけてくる歯科医のワナにはまることもあり、熟考が必要。
自称「歯内療法専門医」のよく使う手であるが、彼らが行った治療の成れの果てをいくつも目にしている。
チャレンジングな治療も患者さんの同意の上なら一考の余地あるが、成功率が50%も無いようなもの、即ち過去に何度も根管治療されている、しかも適切でないもの、健全歯質が薄くなりすぎているもの、外科的根管治療が不可能なもの、保存不可能な破折が見られるものの関しては、一か八かの保存療法はお薦めしない。
その歯牙を敢えて残すことによる近接歯へのリスクも考慮する必要ある。
ドミノだ押し的に次々問題が出ることこあるので、的確な診断は必要。
誤解も多いが、保存のための様々な治療ならびに歯牙移植(元々適応症が少なく、多くの場合「余っている歯」は親知らずであることが多いが、その歯は元々大きな虫歯、歯周病に罹患しておらず、複雑な歯根形態でなくダメージを与えず抜歯可能であり、確実な根管治療が可能であること、そして移植側の骨の幅、深さが十分に存在し適合する場合、即ち多くの場合大臼歯部に限定されることが多い。上を下に、下を上には条件を満たせば問題なし。実施するのは様々な手技が必要であり、ある意味、インプラント治療より煩雑。)などは、インプラント治療と比較して、決して侵襲度の低い治療で決してなく、前述の通り手技が煩雑でコストもそれなりに発生、しかも予後がインプラント治療と比較して劣るとなると積極的にはお薦めできない。
再植治療は、何かしらコストのかからないインプラント代替治療と考えている患者さんも多いが、実情はそのようなものでは決してなく、コストもそれなりに必要だし、自分の歯牙を保存し、侵襲度の低い治療と言われると素人考えでは傾いてしまうが、一部の特に「インプラント嫌いの歯内療法専門医」によって、この辺りの問題が上手くすり替えられてしまっている感が強い。

過去学会などで症例を観たが、積極的に咬合させず、単に飾りでしかない歯牙もよく見た。

しかしながら、最終的には患者さんの考え、価値観である。

各種MTA。
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