医療法人一元会 松井山手西川歯科医院 ペリオ・インプラントクリニック インビザライン矯正

2017.06.28精密根管治療

精密根管治療について誤解も多いので、解説したい。
昨今、当医院も含めてマイクロスコープを用いた精密根管治療を謳い文句にする歯科医院もあるが、
マイクロスコープ自体が精密根管を行う訳ではない。
マイクロスコープがないと根管治療は全くできないとというものでもない。
さらに細かい治療を行おうという志がなければ、少し倍率の高いルーペがあればそれで十分。
また、保険診療においてすべての部分で
マイクロスコープ完備などと広告するとそれのみ真に受けに、つられる人々が少なからず存在するので、マトモに使いこなせもしないマイクロスコープを導入している歯科医院も多いという悲しい事実は何度も記した。
我々の業界で本当にマイクロスコープを臨床に応用している歯科医は、皮肉を込め、軽蔑の意味も込め彼らをマイクロスコープ難民とかオブジェ歯科医院とか言う。
マイクロスコープに何ができるかと言えば、ただ、大きく見えるだけである。
確かに、複雑な根管の探索、クラックの探索等、微細な審査や治療に、少なくとも使いこなしている歯科医にはなくてはならない存在だが、根管治療の原理原則を熟知していれば無くてもいい物でもある。
保険診療において治療全ての部分においてマイクロスコープを用いることは不可能である。
1回目の大臼歯の根管治療、2〜3本の保険外コンポジットレジン充填などをていねいに行おうとするなら、軽く1時間はオペレーションタイムは必要だが、それを担保するだけの保険点数は残念ながら無い。
やればやるほど赤字になるようなもの、誰も行わない。
単にキレイ事、リップ・サービスにしか過ぎない事を認識すべきである。
しかも通常の歯科医院が高価なマイクロを導入しても、周辺機器まで含めて揃える余裕も無いし、決してペイしない。
なので、使っているふりを演出したいだけなら、形ばかりの安もんが売れることも以前に記したが、見よう見まねで使用すると、「木を見て森を見ず。」状態になり、逆に患者を傷つけたるすることもあるらしい。
治療の臨床成績の統計によると、マイクロスコープが歯科に導入された1990年後半以降とそれ以前、現在に至るまでの抜髄、感染根管治療の臨床成績(外科的歯内療法は除く)は80%程度からほとんど向上していない。
これは、感染度が低い抜髄処置はともかく、既に感染している根管は、その構造が非常に複雑故、完全に細菌汚染を除去する事が不可能だからである。
大臼歯の歯髄構造一度ググってみて頂きたい。
こんな網目状のものを完全に洗浄、緊密に充填する事は不可能である。
無論、成績向上させるエビデンスに基づいた理論、手技、治療方法はあるし、それらを実践しているという自負はある。
見方を変えれば、最初に抜髄処置を行う歯科医によって、その歯の運命は決定付けられるとも言える。
大変怖い事であるが、取り敢えず痛みが取れれば治ったと患者も思い込んでいる事が現実だし、その歯科医自身にもどこまでの問題意識があるのか不明である。

歯内療法は突き詰めて言うなら、学術的に様々な派閥、意見、手技、手法があり、どれを用いても科学的エビデンスに基づき、プロトコルを忠実に遵守すれば一定以上の臨床成績を残せるので、ファイナルアンサーというものが存在しない。
他の歯科分野、いや、医学自体が究極はそうとも言えるけれど。
また、一部のマニアしか論じないが、適正なダウエルコア、上部構造補綴物が精度良く装着されないと、上部からの感染が起き、それが歯根の先にまで波及し、膿が溜まり、結局ダメになるという事実は非常に重要で、目を離してはいけない。
"専門医"なら当然このあたりのレポートはご存知だろうが、一部の歯内療法専門医は、根管治療自体は精度の高い仕事を行っていても、(中には、はぁ〜っ???というのもある。)その後の補綴はお粗末、自分自身は補綴を行わない場合、他の歯科医に丸投げで、後のことは関知せずで、結局、その歯牙の治療自体が及第点に届いていないという症例を私自身実際診察するのだが、はたしてどう考えているのやら。
私は、どうもこの辺りが釈然としない、許せない部分なのである。
これも実は歯内療法のみならず他の歯科分野、しいては医学全般にも言えようが。

なので、肉眼で探知しにくい根管の発見、微細な根管の確認とそれに応じた治療方法の考察、選択を行う意味ではマイクロスコープは有用であるが、それらがない状態でマイクロスコープを単に覗いていてもそれは「治療しているふり。」以外の何物でもないし、当然、マイクロスコープを用いた精密根管を行うと予後が良いとの記載には何の根拠もない。
身も蓋もない話。