医療法人一元会 松井山手西川歯科医院 ペリオ・インプラントクリニック インビザライン矯正

2017.05.01先天的歯牙欠損

最近、立て続けに20歳前後で乳歯晩期残存、先天的後続永久歯欠損の患者さんが複数来院された。
先天的後続永久歯欠損自体はそれほど珍しい事ではなく、智歯なども無い人にはちょくちょく遭遇する。
いわばヒトとして進化しているのいかもしれない。
いかにいいかげんな診断、治療が行われているかレントゲン写真を提示し、問題提起したいが、治療になるケース、至らないケース様々なのでできない。
特に知人同士でもないし、同一居住エリアでもないのだが、共通する事がいくつか。

本人、家族共、先天的後続永久歯欠損の事実を知らない、前医による説明もなされていない。
先欠の事実は知らされていても、乳歯脱落後の治療方針が概略さえも説明されていない。
中にはブラッシングをしっかりしていたら、長持ちしますと言われた人もいた。アホですか?

過去、学校検診、通院していた歯科医院においても正確な状況説明がなされておらず、一部の方は、
乳歯の状態が悪く、今にも抜け落ちそうな状態だが、今後の対応の説明もなされておらず、
もっと大前提の永久歯先天的欠如の事実すらご存知でない。
したがって、今後どの様な処置が必要となるかも全く認識がないし、説明しても目先のことばかり気になり、本質的な事の理解が得られない場合もある。
安直にも乳歯脱落後、前後複数の、多分無傷の永久歯歯牙を削合し、しかもその永久歯の歯根が短いため、大きなスパンの、それも適合精度が非常に悪いブリッジ(大きなスパンだが、鑞着操作もなく一発作製しているためと思われる。)
が既に装着されているケースも遭遇した。
そのブリッジは既に動揺している。
まだ、高校生なのにである。
長期的予後は絶望的である。
というような説明をしてもまだ、楽観的、目先のことばかりの父兄もおられるが、こればかりばどうしようもない。
当医院では考えられないことである。

実際、当医院にメインテナンス中の方で、同様のケースがいくつかあるが、将来的な治療の説明は早い時期に済ませており、(一定の年齢に達しても乳歯が生え変わらないなら、後続永久歯先天的欠損を疑い、レントゲン写真を撮影すれば診断は確定する。)一部の方は事前の矯正治療なども開始する。
いずれにせよ、矯正治療、補綴治療(欠損部をブリッジ治療か、インプラント治療か、当医院でフォロー中の方は、歯牙削合を回避し、インプラントで対応することを希望される。)、その他総合的な診断と治療が必要となり、場合によってはコストも必要だが、事前に何も説明されていないと、急に現実を突きつけられ、唖然、愕然、となるが、患者自身は未成年の場合が多く、親が理解できず判断も出せず右往左往で結局ウヤムヤという場合もある。
しかしだ、コスト優先で先欠だからと言って全く問題の歯牙を削合し、ブリッジ治療することは、ためらわれるのも事実。
上顎左右犬歯が先欠のケースがあったが、歯列のコーナー部分にある犬歯には大きな力がかかるため、下手に保険診療で治療するとしても補綴物作製には多くの全く無傷の歯牙を削合してブリッジ治療となるが、前述の通り、高度な知識と技術による歯牙形成、印象、メタルトライ、ロウ着、リマウント・・・・場合によってKey&Keywayなどの知識と技術も必要であるし、最終補綴物を作り上げるだけの知識と技術を有した歯科技工士の手も必要となるが、残念ながらそうそうにはいないし、そこまで行っても長期予後には疑問が残る。
アドヒージョンブリッジという手も無いではないが、予後は疑問であり、時間稼ぎにしかならない場合も多い。
このケースは、状況が非常にであり、完璧を目指すと矯正、インプラント、その他様々なアプローチが必要となり、治療計画、費用見積もりを出したところ、軽くちょっと高めのグレードのプリウス位になった。
コストがネックになってその後診察が途絶えてしまい、それはそれで致し方なしだが、そのまま放置とか、どこかの歯科医院での保険の無茶な治療や手抜き矯正+安物インプラントにならないことだけを願う。