医療法人一元会 松井山手西川歯科医院 ペリオ・インプラントクリニック インビザライン矯正

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2016.09.05歯周病治療の話の 第9弾 週刊ポスト「やってはいけない歯科治療」

歯周病治療についてである。
まあまあ核心を、突いている。
冒頭、大学病院へ一般歯科から歯周病患者が紹介されてくるというくだりがあるが、では、それら一般歯科では何をしているのか?
難治性の特殊な歯周病ならいざしらず、わざわざ大学病院へというのは情けない話である。
実情は記事の通り、一般開業医は歯周病治療に対しての知識も技術もない人が多い。
歯周病治療を行ったふりをしているだけの場合が多い。
メインテナンスと称し、毎月毎月通院していても結局何も行われていない、できていない(当の歯科医、歯科衛生士はできていると思ってるのかもしれないが)、したがって良くならないと相談に来られるケースに本当の多く遭遇すると以前に書いたが、ズバリ、この事である。
ちょろちょろっと浅いスケーリングを繰り返し、ペリオクリンなどを塗りたくって終わりというのが実情だ。
確実にSRP行わず、歯根面を清潔にしない状態で薬を塗りたくっても、そんなものに何の意味もない。
同様に、市販の歯周病治療薬にも何の意味も無いことは書いて欲しかったが。

歯周病のメカニズムならびに治療方法は概ね正しい。
しかし、地域差が大きいが、成人日本人の80%は歯周病罹患、その中の60%以上は中等度以上に進行している。
したがって、SRP治療で対応可能な数も限られてくる。
歯周ポケットが4mmを超えると、暗視野下でのSRPの成功率はぐんと下がるというリサーチが有る。
特に複雑な歯根形態では尚更であり、マイクロスコープも必須となる。
それらが即、全て歯周外科処置に移行とは限らないが、本当はかなりの数に対して必要。
歯周外科治療は明視野下で確実にSRPを行う方法とも言えよう。と言っても技術差が大きいが。
SRPにものすごい時間をかけるような記事があったが、浅い歯周ポケットならともかく、深く複雑な歯根形態に対してなら、初期治療後に再評価行い、早期に歯周外科治療行ったほうがいい場合も多いと思うけれど。
暗視野下のSRPは熟練者が行っても100%確実ということにはならないし、下手なSRPは歯根に取り返しの付かない傷を付けてしまう場合も多い。
また、歯石、壊死セメント質などを取り残しても、見かけ上の治癒が起こり、出口を塞がれた残存細菌が活性され、かえって歯槽骨の破壊を招く場合もある。
歯周外科治療で歯根面を確実にキレイにし、その表面を薬品で処理したり、成長因子を塗布することには一定の効果があるが、これらは暗視野下では処置できない。

私の医院ではほぼ毎日、歯周病に対する歯周外科治療が行われているということは、そのような事情からである。
逆にひと月通して歯周外科治療が全くゼロ、もしくは数例しか歯周外科治療を行わない歯科医院があるとするなら、その医院では、本当の歯周病に対する治療は行われていない、または、そのような治療を希望しない患者ばかりということ。
この辺りは、歯科医院出入りの業者が、オーダー商品内容から、その歯科医院の診療スタイルをよく把握していると思う。
以前にも書いたが、某歯科医院はマイクロスコープ完備と言いつつ、専用品のオーダーが全く無いそうで(例えば先の非常に細い眼科用のメスとか、8-0などの非常に細い縫合糸とか・・・)、まあ、マイクロスコープは単なるハッタリ、オブジェだということ。
歯周外科治療に長けていると、歯周組織の繊細な取扱が可能なため、結果、親知らずの抜歯なども、痛み、腫れの少ない治療が可能となる。
以前、他の医院で親知らずの抜歯をして酷い目にあったので、当医院での抜歯にビビりまくっていた患者さんが、実際に抜歯すると、思っていたより遥かに楽だったとよく言われるが、前述のような繊細なテクニックを使い、かつ、スピードも重要と考えているからである。
歯周病は治るという書き方は誤解を招く。
書かれていないが、本来、歯周病治療を行うには、咬合、矯正、補綴、審美、根管治療、インプラント・・・・総合的な力が必要だ。
歯周病治療は、朝から晩まで、バカの一つ覚えでSRPばかりやっている訳ではない。
結果が患者に伝わりにくく、基礎工事的な側面があるので、昨今の歯科において、審美やインプラントのみ脚光を浴び、歯周病治療は日陰の存在みたいだが、実はそうではない。
逆に歯周病治療がいいかげんな状態でインプラント、インプラント、審美、審美・・・と呪文を唱える歯科医が多いのには困るが。
歯周病治療は、突き詰めて行けば行くほど、痛みを伴うような治療が多いから、患者に嫌われたくない人気取りに熱心な歯科医はないがしろになる。というか、そもそも勉強していない。

中等度〜重篤な歯周病に罹患している場合、歯周外科治療、歯周補綴を駆使しても、長期的な予後は悪い場合も多く
(咬合力に耐えられない)、結局、戦略的抜歯、残存歯保存の観点から早期に(長期的予後が期待できない、複雑な歯周補綴に組み込むリスクがある場合など、複雑な判断は必要。)抜歯し、インプラント行った方が良い場合も多いことはきちんと説明すべき。
安易な抜歯、無意味な抜歯、単なる金儲けの抜歯と同次元で語られても困る。

胡散臭い治療方法はこれに限らず歯科でも多くある。
繰り返すが、歯根面に張り付いた汚染物たる歯石、壊死セメント質などの除去無しに、表面上の洗浄のみでは何の効果もない。
名前を変えて根管治療、口臭治療など、他の分野にこっそり広がっているだけ。
今でも売りにしている歯科医医院もいっぱいある。
しかしだな、以前の号で、学会否定の3Mixは、この雑誌で結構プッシュしていたけれど・・・・・


歯周病治療を行うにあたっては、(歯周病治療だけの話ではないが)患者さんの理解、協力、特にブラッシング(適切なブラッシングが行われていない状況下でメインテナンスを行っても無意味)、継続性のあるメインテナンスが必須であることは、今まで何度も繰り返し言ってき通りである。
特にブラッシングに関しては、毎回毎回メインテナンス時にブラッシング不良部位の説明すると嫌になってしまう人もいるけれど、確実に行わないと、残念ながら今まで行ってきたことがパー、そこまでの話となる。
「先生に怒られるのでちゃんと磨いてきました。」的発言をする人もいるが、見当違いも甚だしい。
自分のためにブラッシングしていただきたい。自分自身の問題なのだから。
ブラッシング自分では行っているつもりでも、実際にはできていない場合も多く、その磨き残しの正体は細菌の塊であり、それを排除しないかぎり虫歯、歯周病の進行を食い止めることは不可能だ。
きちんと指導した方法で、しっかりブラッシングしていただき、その上でメインテナンスを行う。
時間が経過すると確実に明暗分かれる。
自身でできない特別な事情もないのに、セルフケア行わないでメインテナンスは無意味である。
風呂にきちんと入らず、体がかゆいと皮膚科に行く人はいないのと同じ。

「ブラッシングちゃんとしていますか?」という問への回答は「ちゃんとしています。」と返事が返ってくるのだが、子供に、「勉強してるか?」に対し「ちゃんとしてるわ!」との返答と大して変わず、テストの結果のみが、冷酷にかつ正確に報告してくれることと同じだ。
その家庭によって違うけれど。