医療法人一元会 松井山手西川歯科医院 ペリオ・インプラントクリニック インビザライン矯正

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  • 第3弾 週刊ポスト「やってはいけない歯科治療」②

2016.07.12第3弾 週刊ポスト「やってはいけない歯科治療」②

PART3
・確かに破折が原因になっての抜歯は多い。
 しかし、歯科医のウデは歯を残してナンボなのだが、垂直的に破折している歯牙を保存する事は非常に難しいし、 
 マイクスコープとMTAを使っての治療を指しているのだろうが、保険診療というわけにもならない。
 中長期的予後に問題出る場合も多い事は理解すべき。
・治療費用云々の詳細が記されてるが、前述通り、そんな単発的な明細に意味は無い。
・欠損部分への対応方法として、インプラント以外にブリッジ、部分義歯が記されているが、それぞれのメリット、 
 デメリットの記載はない。
 部分義歯が維持安定のため、他の歯牙に負荷をかけることは事実であり、結果、歯牙がダメになり、部分義歯がどんど
 ん大きくなる場合も多いが、定期的に適正なリベースなどの調整を行えばある程度回避できる。
 ブリッジは歯牙を大きく削るので寿命を縮めることは事実だが、歯科医の技術レベル、精度で大きく異なり、
 ある意味、単純にインプラント埋入処置よりブリッジ形成、印象などの方が高度な物が要求される。
 ブリッジ治療を行ったなら、型とりした模型を見せてもらえば良い。
 キレイな形成、印象は素人目で見てもわかると思う。
 特にマージン部がガタガタ、形成が波打っているような状態なら、その歯科医の技術は疑問である。
 境界が不明瞭なのもアウト。
 大きなブリッジ治療の場合、さらに難易度が上がるが、実際に口腔内に装着する際、さらに大きく歯牙を削りだすよう
 な歯科医は、形成時の歯牙平行性が確保できておらず、アウトである。
 削れば当然隙間ができる。
 逆に言えば、保険のブリッジ治療もまともにできない歯科医がインプラント治療を行ってはダメである。
 今回も、部分義歯の別の選択としてのノンクラスプデンチャーが記されているが、何かこれをお勧めしているようで
 怪しい。
 前回も記したが、保険診療可能ではなく、中途半端にコストがかかり、結果は最良な治療ではない。
・成人の80%以上が歯周病に罹患しているのは事実だが、地域差、患者の意識レベル格差も大きい。
・当医院において、歯周病患者の30%程度は中等度以上(一つの指針として、初期治療が終わった時点でのプロービ
 ング値が5mmを大きく超えるもの。)である場合、スケーリング、ルートプレーニングのみでそれ以上の改善を
 望むことは困難であり、その他の要素も多分にはあるが、歯周外科処置の対象となる。
 歯周病のメカニズムが、深い歯根面に固着した歯石、壊死セメント質に刺激された破骨細胞が、周囲歯槽骨を破壊
 するのであるから、暗視野的な治療を繰り返しても効果的ではなく、明視野的歯周外科治療が必要である。
 一つのリサーチとして、プロービング値が4mmを超えると、暗視野的ルートプレーニングでは取り残しが出るとの
 データーがある。
・歯周病治療で歯肉剥離掻爬術(FOP、世界的には通じない。正確にはモデファイドウィドマン法。この他にも様々な
 方法があり、適宜使い分ける。)を行うことも私は多いが、残念ながら日常臨床で行っている歯科医は少ない。
 歯周病治療が蔑ろにされている証拠であり、通常は歯石取り、しかも上層部分のみを行って歯周病治療を行っている
 とお茶を濁してる歯科医が殆どであるのが現実だが、それらに意味は無く、無駄に検診に通院させられている患者も
 多い。
 当然、高度な知識、技術、経験が必要であり、インプラント治療などは歯周病治療の延長線上にあるとも言えるの
 で、歯周外科治療もできない歯科医がインプラント治療を行ってはいけない。
 取り敢えずインプラントが入ってますが、他の部分は歯周病でボロボロという症例によく遭遇するし、Blogでも紹介
 した。
・明らかに誤りであるが、FOPは保険診療可能であるし、実際、多くのFOPを当医院では保険診療で行っている。
 追加的な除菌術、その他治療が何を指しているのか不明だが、そのようなものは不要だと思うし、胡散臭いものも多々
 あるので、取材不足は否めない。
 少なくとも私は「バクテリア除去」を付帯的に行ってはいない。する必要もないが、詳細が不明なので、
 これ以上何も言えない。
 歯根面処理、エムドゲインなどはこの限りにあらずだが。

第3弾ということだが、大筋では正しいが、相変わらずファールも多い、誤解を与える書き方も多い。
理解能力が低いと鵜呑みしてしまうが、誰も言わないが、これこそが、今の歯科医療の大きな問題の一つである。

私の一番の関心といえば、この著者が自身の右下の奥歯の治療をどうしたかということである。
クラックを修復したのか、ヘミセクション、ルートセパレーションしたのか、抜歯して格安インプラント治療したのか、
もっときちんとしたインプラント治療したのか、はたまた部分義歯したのか、ノンクラスプデンチャーにしたのか・・・
それなりに取材して色々な「事情」が分かったのなら、治療経過をレポートし、明らかにして欲しいものである。
少なくとも読者には一番説得力がある。
そうでないなら、誤った情報を垂れ流し、混乱させ、後は知りません、というのはあまりにも無責任であるし、
安売りインプラント治療なら、結局色々言ってもプライオリティはコストなのだし、自分は最高の治療を受けましたなら、「はぁ?」である。
そして、治療した予後のレポートも非常に重要である。
コストを抑えた治療、経過観察等消極的治療を選択しても、短期間で問題出たなら何の意味もないし、そもそもの診断が甘かったのかもしれず、何のお薦めにもならない。
部分義歯を作ったが、気持ち悪くて使えないという事態も大いにありうる。
情報の丸投げのみで、経時的再評価、考察なきものは科学的とは言えない。

歯科治療は患者の意識レベル、リテラシー、性格、コスト、その他によって大きく変わる。
人によって治療内容が変わるということは本来おかしいが、それだけ選択肢が多いということで、現実は現実。
治療のプライオリティが価格のみなら、格安インプラントもありかもしれないが。
それぞれの治療には必ずメリット、デメリットが存在する。
将来、認知症に罹患してセルフケアできなくなるかもしれないから、複雑な治療を行わないほうがいいというのも、ある意味真実だが、そんな先の事を今の医学で正確に予測することは不可能である。
理解不足のまま、無理して治療する事は止めた方がよい。
長期安定のために、患者さん自身で行わなければならない事も多いので、確実に行う自信がないなら、止めた方がよい。
歯科にかぎらず、全ての事象はリスク確率で考えるべきであるが、大局的な見方ができないなら止めた方がよい。
ましてや治療に非協力的、ルーズなのは論外、話にならないし、一切、関わり合いたくはない。

「やってはいけない歯科治療」以前に、「複雑な歯科治療をやってはいけない患者」の存在も大きいが、そのような方向で論じられたことは、少なくとも私の知る限りない。

意識レベル低く保険診療で中途半端な治療を繰り返し、ケアもしなくてどんどん状況が悪化するなら、それは貴重な保険医療費を食い潰している事に他ならないし、この部分へのメディアの切り込みも必要だと思うが、残念ながら何もない。

少なくとも私の目指している治療、私の患者さんが私に求めておられるものとは違うのでどうでもいいのだが、この企画はまだまだ続くの?

それと、私の患者さん以外からの質問は、「なんでも歯の相談室」ではないし、日本国民の歯科環境の向上という大義名分も全くなく、プチブルと何と言われようとも、毎日毎日来院される目の前の患者さんで精一杯なので、実際の診療を除き一切受け付けないのでご了承を。