医療法人一元会 松井山手西川歯科医院 ペリオ・インプラントクリニック インビザライン矯正

2016.06.28週刊ポスト「やってはいけない歯科治療」①

週間ポスト7月8日号の記事である。
私は別にこの週刊誌をいつも買っている訳ではない。
コンビニで、歯科関係記載の表紙に反応しただけ。
旨そうなマトンの店には興味あるが、なかなか関西にはないです。
並列して掲載されている内容には下世話なものも多いので、どのような階層を対象としているのか、取材対象の経歴、取材記者の理解度が不明なので、信憑性には疑問も多い部分もあるが、事実もあり、いくつか検証してみよう。
PART1
・歯科医師過剰は事実。ワーキングプアで、格差が激しいのも事実。
 完全2極化、年収ベースで軽く30倍は開いていると思う。
 平均年収300以下の歯科医は30%以上存在するし(ただし、研修医、研究者なども含む)、開業医の年間売上の平
 均など3600万程度にすぎない。
 コンビニの軒数より歯科医院の軒数の方が多いのは、少なくとも統計上は事実であり、治療方針、提供する医療サービ
 スが全く違うので、当然来院される方のクラスタも違い、全く、何の関係も影響もないが、事実、私の医院の周囲にも
 歯科医院が溢れている。
 なので、患者獲得合戦に必死で、本質の部分で勝負せず、患者のご機嫌取りに終始、深夜、日祝日診療行わざるを得な
 い医院も多い。
 一見患者の利便性が高いようにも思うが、ほぼ休みなしということにはこの様な裏事情がある場合も多い。
 疲れないのかな?そんなので落ち着いてじっくり治療できるのか?
 私は休み無し、ぶっ続け、朝から晩まで診療・・・そんなにシンドイのは嫌である。
・虫歯を取り残したほうが儲かるはどうなのか?医院の経営云々より、その歯科医の資質の問題だと思う。
 いいかげんな治療をする歯科医ほど何度も繰り返し患者がやってくるから、気付けば待合室に人が溜まり、予約がとれ
 ない、見かけ人気歯科医院というのはどうかと思うけれど。
 短期間で次々問題出るのは、患者の口腔内を包括的に診断、治療計画の立案ができていないということ。
 もしくは、分かってるけれど、細々したことを言うと患者に嫌われるので、見て見ぬふりをしているのかもしれない。
 短期間で同じ治療箇所に問題が再発というのは問題外。
 これは、患者側の問題、すなわち意識レベルの高低の差も大きく、その場しのぎ的な治療も求める患者ばかりだと、
 この様な事態に陥ることは想像に難くない。
 きちんとした歯科治療を行おうとすれば時間もかかるし、コストもかかるが、一度治療した所が短期間で再治療という
 ような事態は、少なくとも私の医院ではありえないし、歯を失う原因を作っている銀歯と言うのは明らかな誤認であ 
 る。
・予防拡大というコンセプトはもはや古すぎます。
・厚労省の指導は事実だが、平均点数でその歯科医院を査定することはいかがなものかとは常々感じている。
 実際の平均点数など非常に低く、逆に考えれば、補綴物1本形成、印象、装着すれば直ぐオーバーするような点数で、
 そのような平均点数内ではとても体系的な治療は行えないし、平均点数を下げるため、治療回数の引き伸ばし、
 無駄な定期検診と称する行為が行われていることも事実。
 結局保険医療費の総額が増えるので、この事のほうが問題なのだが。
 意味のない定期検診のウソ、まやかしについては以前にも記した通り。
PART2
・保険の銀歯が全てダメというのは嘘である。
 確かに、金合金、オールセラミックスと比較して物性的に劣る部分は多々あるが、全否定する必要はない。
 要は、精度の高い治療を行えば、いわゆる銀歯でも問題の無いケースも多く、事実、当医院でも保険外診療を利用され
 る患者さんも、コストの面から一部保険内診療を希望される場合もあるが、長期的経過観察を行っていても材質に起因
 する問題が発生する事は稀である。
 もっと言うなら、当医院において、患者の条件のほぼ同一環境下においての、保険診療補綴物と保険外診療補綴物の経
 時的問題発生確率(2次カリエスの発生。レジン等の摩耗、劣化はこの限りでない。)に有意差はほぼないよう思う。
 術前の歯周マネージメント、形成、印象、適合チェック、そしてなによりも技術レベルの高い歯科技工士の手によるも
 のであれば、問題発生の確率は低い。
 以前に本ブログでも紹介したが、銀歯の隙間からセメントがはみ出ているような物は論外なのであり、このようなもの
 と同列に比較することはできない。
 銀歯に隙間ができること、なぜできるのかが、そもそもの問題であることへの言及はない。
 そして、高いコストをかけた保険外診療なら安心かと言えば・・・前述の通り、術前歯周マネージメント、形成、印 
 象、適合 チェックが甘く、歯科技工士の技術レベルが低いと何のメリットもないし、コストが高い分、ある意味保険
 診療より害は大きいのだが、この辺りの理解は低い。
 プロセスは同じで、出来上がったものだけが違うというのが現実はやはりおかしいのだが、内容的に同一にはできず、
 治療内容の差異を参照願いたい。

 精度が全てである。

 また、銀歯以外の治療選択肢を患者に提示していないとの記載があるが、より精度の高い治療は現実問題として
 保険診療での対応は不可能であり、矛盾しているし、アマルガムはダメだからやり変えましょうと、問題のない歯牙を
 ヘタクソなコンポジットレジン充填行い、かえって問題を大きくしている場合も多い。
 熟達した歯科医がアマルガム充填行うと、本当に芸術の域である。
・保険診療の銀歯はダメ、保険外診療は金儲けというなら、患者はいったいどうすればいいのかイミフ。
・因みにベストな歯冠修復材料は、審美的にはディスアドバンテージだが、金合金(高カラット)だと私は考える。
 また、銀歯が天然歯より硬いというのは、何の事を言ってるのか不明。
・保険診療は日本が世界に誇れる良いシステムではあるが、歯科において費用負担はかなり差別的であるものの、得られ
 る医療サービスは一律で選択の余地なし、30〜40年何も進歩しない昔のテクノロジーでとてもグローバル・スタン
 ダードとは言えず、また、保険診療内でその制度を活用して本当に突っ込んだ治療を行おうとすれば、色々横槍が入る
 など八方塞がりの状態であることをまずご理解いただきたい。
 保険診療で良い治療をという歯科医も多いけれど、では、本人、家族、知人にも保険診療しているのだろうか?
 カルロス・ゴーンの愛車はポルシェというような、単なるリップサービス、キレイ事にすぎない。
 医科においても様々な問題を抱えていると聞く。
 そして、保険診療は、破綻への道を確実に進んでいるということ。
 この辺りは一流患者、三流患者の記事でも述べたが、一見、世界最先端の先進治療行っているように思われている
 アメリカにおいて、そのテクノロジーを享受できるのは、高額な民間医療保険を支払える一部の階層でしかない。
 海外の学会誌を読んでいると、びっくりするような酷いのも多い。
 そこは非常にドライなのであるが、理にかなっているとも言えるシステムで、破綻しかかっている日本の保険制度も
 いつまで維持できるのか、もっと患者も巻き込んで真剣な論争は必要だ。
 私見だが、歯科において様々な方策を講じれば、クオリティを落とさず1/2程度に落とせると思うけれど。

 保険診療において、できる事とできない事の一線が存在することは事実。
 ただ、その線引きは低い位置にある。

続く