医療法人一元会 松井山手西川歯科医院 ペリオ・インプラントクリニック インビザライン矯正

2016.06.30週刊ポスト「やってはいけない歯科治療」②

PART3
・コンポジットレジンを過大評価し過ぎである。
 確かに、当医院で審美的要求が多いので、コンポジットレジン充填は非常に多く、メタルインレー処置の数は非常に少
 ない。
 耐久性、審美性が他のマテリアルと比較して圧倒的アドバンテージあるわけではない。
 大きな咬合力がかかる部位、大きな補綴が必要となる部位には全く向かない。
 ハイブリッドも怪しい。
 また、高度なマテリアルを使用しようとも中長期的には摩耗、変色が必ず起こる。
 海外では、前歯部へガイドステントを使ってラミネートベニア状のコンポジットレジン築成を盛んに行っているようで
 あるが、確かに1day治療が可能でメリットもあろうが、マテリアルの劣化による長期的予後には疑問がある。
 したがって、診断をきっちり行い、患者さんと相談の上、治療方法、マテリアルの選択を行う事が重要。
 コンポジットレジン同様、近年盛んな接着歯学も過信してはいけない。
 また、記事にはないが、チェアサイドでのCAD/CAMを使ってのセラミック削り出しの1day治療も、私の目から見れば
 精度、機能、審美的観点でまだまだである。
 スタートラインの光学印象自体がまだまだ。
 うまく使って、細かな修正を歯科技工士が行えばいいのだが、そうなると1day治療ではなくなり、本末転倒である。
PART4
・残念ながら稚拙な歯科医がインプラント治療を行い、問題が多発していることは事実。
 逆に、難症例はインプラント治療できないと言い切って、簡単な治療のみを行っている歯科医が多いのも事実であり、
 また、必要数以上のインプラント本数の埋入、インプラント本来の適応症例に応用されていない事は大変悲しい。
・初診予約取って、翌週にはインプラント治療という一例が示されていたが、信じられない。
 検査、診断、治療医計画の立案、説明、術前の様々な処置を考えるとそのようなタイムテーブルで可能なはずは絶対無
 いと言い切れる。
 図面もなしに、依頼を受ければ直ぐ新築工事行うようなもの。
 まあ、犬小屋レベルなのかもしれないが。
 だいたい、来週にインプラント治療可能なほどの予約時間を直ぐ押さえられるということは、その医院は相当暇だとい
 うこと。
 そのような事に怪しいと気づく気づかないというのは大きい。
 それ以前にネットでちょろちょろと調べ、情報を鵜呑みにすることの問題には触れられていし、状況の詳細ならびに
 治療終了後のメインテナンス、患者の理解度、協力度には全く触れられていないので、一概には言えないが、
 まあ、インプラントが副鼻腔を突き抜けることはよくあることですとの説明は???である。
・ネット上での高評価は金で買えるは事実。
 当医院にもそのような営業はちょくちょくかかってくるが、アホらしいいので一切相手にしていない。
 今時、ネット情報は全て真実と受け止めているリテラシーの低さにも問題はあるが、歯科にかぎらず一部の階層は
 特定の情報に非常に誘導されやすい。
 いや、排除するより誘導するほうが簡単ではあるから、このような業者が繁盛するのだが。
 スタッフ総動員での自作自演も多いが、よく読めば、そして調べれば何かおかしいと気づくと思うけれど。
 因みに、当医院では、本当に好意で書き込んでくれる方もおられるようであるが、公式Web site以外の情報には一切関
 知しない。
・自分で金出して、「日本の名医・・・」とか、落ち目のタレントとの対談形式で掲載してもらっている人がいるのも事
 実。
 私にも案内が来たことがあるが、自分で自分を名医と言い切れるほど厚顔無恥ではないし、
 リテラシー高い人にはかえって逆効果でしかない。
・耳鼻科領域の事を何も考えずに安直な上顎へのインプラント治療にしばしば遭遇する。
 耳鼻科医の苦言もごもっともだ。
 自分の技術の無さを棚に上げ、骨が薄いからインプラントできませんと言い切る歯科医が良心的で、可愛く思える。
 CTだの、なんだの診断技術は向上しているにも関わらず、この手の問題は増加の一途であり、それらのセカンドオピニ
 オン、尻拭い的治療も多い。
 私は上顎への複雑なインプラント治療を行う際、CT撮影ならびに耳鼻科の意見を求めることは普通であるし、
 状況によってはその他の主治医へも意見を求める。
 こればかりは業界全体での問題意識の共有化と対策の構築は必須であろう。
・しかし、歯肉にインプラントが入っている写真があったが、あれはいったい何?
 多分、侵襲度の低いフラップレス埋入、(処置部位を開けず、直接行う方法。いくら術前に的確な診査、診断が行われ
 ようとも、実際、術前画像診断とオペ時に違うことはよくあること。過信しているからこういうことになるのかも
 しれない。)ということを謳い文句にしてのお粗末な結果だろうが、オペ中の感覚でおかしいと全く気づかな
 かったのか、なぜあなんに器用に骨を避けられるのか、ある意味驚異的である。
 慢心し、注意力に欠けるとこの様なトラブルは起こりえる。
 先日、何人もの自衛隊員が、模擬戦において誤って実弾を使用したらしいが、銃器に少しでも知識あるなら実弾と
 空砲の形状の違いは直ぐ分かるし、銃口の先端にブランクアダプタを装着する必要があるのだが、ダラダラ、
 なあなあでやってるとこのようなことも起きるということだし、そのような者が銃器を扱う資格はないのと
 同じである。

 確実性を優先するので、私はフラップレスのオペは殆ど行わないし、雑誌掲載ほど酷くはないものの、他院において
 インプラント先端部分が歯槽骨と隣在歯歯根をぶち抜いて問題発生の相談を受けた経験はある。

 
ニュースソースが疑問、少々考察不足、理解不足は否めないし、繰り返すが下ネタと並列されているような記事なので情報の質はともかく、概ねこのような感じである。
かと言って、有名新聞社、出版社発行の同様の特集記事にもおかしなものいっぱいあるが。
本来は正確な情報を提供すべきメディアの責務を昨今果たしていないばかりか、いたずらに不安を煽るような記事も多
く、一部の事のみに焦点を当てたいいかげん適当な記事はやめてもらいたいと思うが。
読み手側の問題も多い。
このような記事が出ると都合悪く感じる歯科医も多いが、正確な、学術に基づいた、スタンダードでエビデンスある内容で、記者、出版社のバイアスがかかってないなら、私はドンドンやれと思う。
数年前のインプラントバッシングで、日本中の多くの歯科医院が大打撃を受けたが、当医院は何の影響もないどころか、
症例が伸びたほどであり、淘汰が進んだかなと思った時期もあったが、残念ながら、現在、喉元すぎれば状態に戻りつつある。
(日本全体の絶対的なインプラント数は20〜30%落ち込んだままらしいが、この辺りからもう少しマイナス部分が正常な状態だと思うけれど。)

情報に振り回され、よく考えずに感情論、EUとは何かも分からず、結局長期的には得策にはならないであろう結果に賛成したイギリスを笑ってはいられない。
日本でも同じような事があったな。
まあ、TVでイギリスは一つの国だと今まで思っていた、辛口を売りにするバカコメンテーターもどうかと思うけれど。

さらに淘汰されればいいと思うが、歯科医療の質の向上を目指すなら、大前提としての患者自身の質の向上、患者力向上も同時進行的に行わなければならないし、理解不足のまま、無理して複雑な治療を行うようなことは避けたほうがよい。
やってはいけない歯科治療以前に、複雑な歯科治療をやってはいけない患者というものがある。
治療〜後々のメインテナンスが重要になってくる、この辺りは医科と違うところ。
まあ、医科でも治癒しても生活態度悪くて再発というのはよくあることらしいが。
結局、歯科の場合、ケースセレクションが甘くてトラブルという話はよく伝聞する。
ロクな事にはならないので、ある程度絞りこまざるをえない。
しかし、手を変え品を変え、様々な口説き文句での客寄せ、誘惑してくる歯科医は要注意であるな。
まあ、悲しいかな、歯科医相手のウザくてアホ情報商材屋もいっぱいいて、こんなのに引っかかる輩も多いのだが。