医療法人一元会 松井山手西川歯科医院 ペリオ・インプラントクリニック インビザライン矯正

2016.01.08疑似科学に惑わされた患者をどう説得するか

患者さんが治療において根拠なき話を信じ込んでいるという事は、老若男女問わず日常診療でちょくちょく遭遇する。
理論だった説明すると、ご自身が信じていた事が科学的根拠のない、単なるデマであるということをほとんどの方に理解していただけるのだが、中には、ご自身の「信念」を絶対変えようとしない方もおられる。
しかし、このような方の持っている情報は多くが間違い、適応外で決して情報収集力は高いとは言えず、一番の問題は、ニュースソースは専門家が発したものではなく、「そういうことをよく知っている家族、知人」レベルからの情報であること。
逆に情報の海に溺れてしまって何が真実なのか分からなくなってしまっている、自分にとって納得できる、都合のいい情報のみを信じこんでしまっていることも多い。
いわゆるリテラシーが低いということ。
これは当医院への来院動機として、Official web siteを「見て」という方にも散見される。
「見た」ではダメで、「読んで理解」しなくては。
さらに、共通点として見通しが甘くて楽観的ということもあげられる。

治療に対する説明をいくらきちんと行おうとも、ご本人が自分の信念に凝り固まっている以上、それ以上の話は「説明」ではなく、「説得」になってしまうので、はたしてそこまでのことを行うべきことなのかは疑問が残る。
全ては患者の自己責任となり、損するのも患者自身。
同業者は言うに及ばず、友人、知人の医師も同じような事を言う。
全く違う業種でも同じような事は多々あると聞くが、ご本人が考えられているのとは裏腹に「他人」は皆ドライである。
以下の文に書かれているような「説得」は、現実にはほぼ無いと考えて頂きたい。
今日的治療指針に沿った説明をし、(残念ながら、これもかなりのバラつきあるが)理解してもらえない、
似非医学の方を信じるなら、お好きにどうぞというのが本音だろう。
もっとこなさなければならない仕事が山積みなので。
ただし、胡散臭い治療を提案してこれら患者を食い物にする輩も多い事は残念であり、怒りすら覚える。
「絶対儲かりますよ!」というような胡散臭い話の営業がちょくちょくあり、相手にもしないが、それと全く同じ。
なんかねえ、貧相なカッコでそんな話されても説得力ないし、そんなに「絶対儲かる」なら、人に話さず自分で行えばいいのにと思うけど。
なので、詐欺師は見栄張らしいが・・・・

以下、日経メディカルの記事を転載する。

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疑似科学に惑わされた患者をどう説得するか
2016/1/6
加納 亜子=日経メディカル
 日々、インターネット上で溢れるほどの医療情報が発信されている今、厚生労働省などからの通達や医学論文を読む機会が多い医療従事者はともかく、患者やその家族といった一般の受療者からすれば、どの情報を信じればよいのかの判断は難しい。加えて、適切な知識を持っているかどうかにより、様々なウェブサイトに記載されている説明や評価の文言の受け取り方や印象は変わる。
 ここで読者の皆さんに、りんくう総合医療センター(大阪府泉佐野市)周産期センター産科医療センター長の荻田和秀氏が昨年末に行った講演内容をお示ししたい。荻田氏はその講演で身近にある物質を「DHMO」と呼び、その特性を説明していた。どのような印象を抱くかを考えてみてほしい。
 DHMOの特性は以下の通り。
・染料の主成分に用いられ、洗浄剤や溶剤に使われている。
・常温では液体。無色透明無臭。
・加温すると爆発的に気化することがある。
・液体のDHMOを呼吸器に吸引すると死亡する。
・純度の高いDHMOは溶血作用があり、赤血球を破壊する。
・人体に蓄積される(特に妊娠後期の女性の皮下に蓄積)。
・マウスの妊娠初期にDHMOを大量に皮下注射すると胎仔の奇形の発症率・流産率が有意に高まることが示されている。
・危険性が高い物質にもかかわらず、厚労省もいまだに規制していない。
 筆者は、「この物質は何だろう。危険かも......」と考えつつ講演を聞いていたが、読者の皆さんはどのような印象を受けるだろうか。
 種明かしをすると、「DHMO」は化学式di-hydrogen monoxideの略。一酸化二水素、つまり「水」をあえて分かりにくくした呼び方だ。「なんだ、水か」と思った方は案外多いのではなかろうか。
 これは、水を説明していることを伏せ、事実に反しない程度にあえて負の印象を強調し、聞き手があたかも恐ろしい物質だと感じるように仕向けた言葉遊びの一例だ。荻田氏はDHMOを例に挙げ、「批判的な視点を持たずに、だまされていませんか?」と講演に集まった一般の人々に疑問を投げ掛けた。
 荻田氏は、産婦人科医でありながらジャズピアニストという経歴を持ち、2015年12月まで放映されていたTBSの金曜ドラマ「コウノドリ」の主人公「鴻鳥サクラ」のモデルとなった医師。「産婦人科医が何を思い、日々診療をしているのかを患者やその家族、一般の人にどのように伝えればよいか考えていたときに、たまたまお産を担当したのがコウノドリの原作者、鈴ノ木ユウ氏の奥さんだった」とコウノドリの誕生秘話を話していた。
 セミナーでは、周産期医療の実情や未受診妊婦の多さ、風疹ワクチンの接種状況など、ドラマで取り上げられたテーマを示し、日本における産科医療の実態を説明。そこで荻田氏は、国民のメディアリテラシーを高める必要性に言及。冒頭のDHMOを例に挙げたというわけだ。
 誰もがだまされやすく気を付けるべきものに、「プロパガンダ、疑似科学、都市伝説、検証の終わっていない仮説が挙げられる」と荻田氏は話す。
 医療従事者からすれば、当然ながら医療情報に触れる際に日ごろから気を付けているだろう。だが、自分にとって都合の良い話や印象的であればあるほど、つい信じてしまうのが人の性。どんな人でも、まことしやかにささやかれる疑似科学を信じたくなるときもあるだろう。
 いつでもメディアリテラシーを低下させないための対処法を荻田氏は4つ挙げる。(1)センセーショナルな学説に「うさん臭い」と感じる感覚を持つ、(2)データの持つ意義や背景をできるだけ理解する、(3)統計処理が適切か注意を払う、(4)陰謀論を唱える説はとりあえず眉唾物と思う──だ。
 このように、情報を得る際の注意点を知っているかどうかで、例えば一部のウェブサイトに記載された「ワクチンは打ってはいけない!」「常識はウソだらけ」といった主張など、疑似科学に対する一般の人々の見方は変わってくるのではないかと筆者は感じている。
疑似科学を否定する第一歩は聞く耳を持ってもらうこと
 では、医療者が知る正しい医療情報を一般の人々にも理解してもらい、疑似科学に惑わされる人を減らすにはどうすればよいのか。医療の専門家である医療従事者が、丁寧に説明をするしかないのではないだろうか。
 医療従事者からすれば、患者一人ひとりに説明のための時間を割くのは難しいという思いがあるだろう。だが、適切な医学情報を伝えようと細かく書き込んだパンフレットや治療の注意点を書いた紙を患者に渡したとしても、何を信じればよいのか分からず不安に感じている患者やその家族にとって、それを的確に読み解くのは難しい。紙を渡すだけでは適切な医学情報は伝わらない。ポイントとなるのは、相手に聞く耳を持ってもらう工夫だろう。
 例えば、誤った情報を信じる相手に「それ、間違った情報だから」と真っ向から否定しないよう徹底するのも1つの手だ。そのような対応をしてしまうと、どんなに医師が熱心に適切な情報を伝えようと思っても、患者やその家族に聞く耳を持ってもらえないからだ。
 過去の取材で、ある医師に患者が適切ではない情報を信じる患者への対応を聞いたことがある。その医師によると、「なぜそう思うのか」と患者に聞き、一通り話を聞いた上で「なるほど。だからそう思うのですね」と共感して一旦話を終える。そして、話題を切り替えて「ところで、医師から話を聞いたことはありますか」と尋ね、医療従事者の話を聞いてもらえるよう誘導するのが1つの方法としてあると説明してくれた
 一方、荻田氏は漫画とドラマの取材協力を担うことで正しい情報を伝えるよう取り組んだ。荻田氏はセミナーで、医療従事者には「我々が防波堤の1つとなる。日常診療での見方とは少し異なる視点で患者を守るにはどうすればよいかを考えてほしい」と話し、一般の参加者には「医師は儲けを得るために医療を担っているわけではない。産婦人科医としては1人でも周産期に生じる可能性のある不利益を防ぎたいと思って取り組んでいる。それをまず理解してほしい」と訴えた。
 医療従事者が日常診療の中で医療に関する正しい知識を繰り返し伝える努力をすれば、患者の治療や予防に対する意識は変わる。医療従事者にとってみても、こうした取り組みは治療効果が得やすくなる上、しっかりと患者の話を聞いてくれる医師だと患者からの信頼を高めることにつながるのではないかと筆者は考える。
 医療に関する適切な情報を広く伝えようとする取り組みはその他にも始まりつつある。厚生労働科学研究「ワクチンにより予防可能な疾患に対する予防接種の科学的根拠の確立及び対策の向上に関する研究」の「メディアを活用した新たな予防接種啓発活動の試み」(研究分担者:岡部信彦氏)では、ワクチンや感染症に関する情報を一般向けに発信する取り組みを進めている。読者である医療従事者の皆さんには、荻田氏や研
究班の取り組みをきっかけに、患者やその家族の目線に合わせた情報の発信を今以上に進めてほしいと感じている。