医療法人一元会 松井山手西川歯科医院 ペリオ・インプラントクリニック インビザライン矯正

2015.11.13家族に喫煙者が居た場合の3歳時虫歯罹患率

日経メディアに興味深い記事が出ていたので転載する。
個人的には間接喫煙によるタバコの成分のみが、虫歯罹患率アップにつながっている訳ではなく、もっと違う理由があると思うのだが、、、、、
一度よく考えていただきたい。

神戸市で生まれた子どもを対象に行われた後ろ向きコホート研究で、同居する家族に喫煙者がいる子どもでは、3歳時点での虫歯罹患率が有意に高いことが明らかになった。生後4カ月時点で受動喫煙している子どもでは、虫歯罹患リスクが2.14倍だった。一方、母親が妊娠中に喫煙したかどうかは、3歳時点の虫歯罹患率と関連が見られなかったという。研究結果は、京都大学の田中司朗氏らが、BMJ誌電子版へ2015年10月21日に報告した。
 依然として、先進国でも幼児の虫歯は問題となっている。虫歯罹患の原因は多様だが、受動喫煙も虫歯を引き起こす可能性を持つことが示唆されている。受動喫煙は、口腔粘膜に炎症を誘導し、唾液腺の機能障害を引き起こし、免疫系の機能を低下させることが知られている。受動喫煙がある小児では、唾液中のIgAレベルが低下し、シアル酸の濃度が上昇しているという報告もある。シアル酸はミュータンス菌の凝集を促進し、歯垢と虫歯の形成を引き起こすことが示されている。しかし、現時点では、受動喫煙の機会を減らせば小児の虫歯が減るかどうかは明らかではない。
 著者らは、2004年から2010年に神戸で出生し、市の乳幼児健診を受診していて、妊娠中の母親の喫煙状況と生後4カ月時点の世帯の喫煙状況が把握できている小児7万6920人を対象に分析を実施。主要評価項目を乳歯の虫歯罹患に設定し、Cox回帰モデルで傾向スコア調整を行った上で、妊婦の喫煙および受動喫煙と虫歯罹患の関係を検討した。母親や家族の喫煙状況は、標準化された質問票を用いて母親に尋ねた。乳歯の虫歯罹患については、3歳時点の歯科医の健診で、1本以上の虫歯、欠損歯、充填歯があると判定された小児を虫歯罹患者とした。
 家族の喫煙状況で分類すると、7万6920人中3万4395人は家族に喫煙者がおらず(喫煙者なし群)、3万7257人は家族に喫煙者がいるが小児の前では喫煙せず(小児前喫煙なし群)、5268人は家族中の喫煙者が小児の前でも喫煙していた(受動喫煙あり群)。母親が妊娠中に喫煙していた割合は、喫煙者なし群で8.4%、小児前喫煙なし群で24.1%、受動喫煙あり群で25.0%だった。
 7万6920人のうち3歳時点で歯科検診を受けていたのは7万711人(91.9%)で、うち1万2729人に虫歯が認められた。カプランマイヤー法を用いて推定した3年間の虫歯罹患率は全体では18.0%だったが、喫煙者なし群は14.0%と低く、小児前喫煙なし群は20.0%、受動喫煙あり群は27.6%と高かった。
 喫煙者なし群を参照群として傾向スコアで調整したハザード比は、家族内に喫煙者がいる2群とも有意に高いことが判明。小児前喫煙なし群の調整ハザード比は1.46(95%信頼区間1.40-1.52)、受動喫煙あり群では2.14(1.99-2.29)になった。
 なお、母親が妊娠中に喫煙していた小児については、調整ハザード比は1.10(0.97-1.25)で、差は有意にならなかった。
 今回得られた結果について、著者らは「生後4カ月時点の受動喫煙は虫歯リスクを2倍超にし、受動喫煙がなくても世帯の中に喫煙者が居ると約1.5倍になった」と総括。この研究は観察研究なので、受動喫煙と虫歯の間に因果関係があるかどうかは明らかにならないが、乳幼児の受動喫煙を減らすための公衆衛生施策の必要性が示されたとしている。
 原題は「Secondhand smoke and incidence of dental caries in deciduous teeth among children in Japan: population based retrospective cohort study」、全文は、BMJ誌のWebサイトで閲覧できる。