医療法人一元会 松井山手西川歯科医院 ペリオ・インプラントクリニック インビザライン矯正

2015.11.27インビザライン矯正について思うこと

インビザライン矯正実施開始し約3年になる。
全面的なワイヤー&ブラケット矯正は極端に減少した。
最初からインビザライン矯正をご希望で来院される方もコンスタントにおられ、良好な成績をおさめている。
しかしながら誤解も多いので私なりのガイドライン、注意点をいくつか。

1・インビザラインは今までのワイヤー&ブラケットと全く違うシステムであるが、単独で最初から最後まで全ての歯列
  矯正に対応はできない場合がある。
  この場合、後述5の通り、ワイヤー&ブラケット法を併用して治療可能である。
  したがってインビザラインは既存の矯正システムに全面的に取って代わるものでは今のところないというスタンスを
  とっている。
2・インビザラインは、術者からの、患者からの目線でも今までの矯正システムと比較して決して安易で簡単な矯正シス
  テムではない。
  歯科医側の問題点として少なくともワイヤー&ブラケット矯正治療を多数行ったことがない歯科医が行うべき治療で
  はない。
  そもそも開発されたアメリカにおいては一般歯科医が矯正を行うシステムとして開発されたのであるが、
  現在、日本ではそのような取扱ではないし、歯科医の力量は測れないという問題はあるものの、
  それはそれでアライン社日本法人のとりあえずは賢明な判断である。
  話が逸れるが、インプラント治療においても業者は売らんがためのディスカウント合戦で、歯科医がそもそもインプ
  ラント治療可能な知識、技術、経験のあるなしなどどうでもいいという考えが、昨今のインプラント治療問題の元凶
  の一つであり、根底に流れている。
  逆に言うと、矯正専門医が通常の診療では行わないシリコンでの精度の高い印象、コンポジットレジンを用いての
  アバットメントの装着の必要があるため、この辺りのテクニックセンシビティー性を理解して実行できないと、
  うまく治療できない可能性がある。
  また、患者側からも、単純に審美性が高いという理由のみで選択されるべきものでもない。
  これは最近はやりのインコグニートなどの新世代舌側矯正も同じである。
3・自分で着脱可能であるため、治療に非協力的で、いいかげんな患者が行うべき治療ではない。
  (別に矯正治療に限らないが。)
  当医院では、保護者同席のもとインビザラインについて説明し、治療を指示通りに完遂できる方のみ実施しているの
  で、今のところ中学生以上、治療の必要性、インビザラインの特性について理解できて治療に協力できる方のみに
  限定している。
  それでもなお自己判断、自己責任で指導通りに矯正を実行しない、できないのなら、そこまでの責任は負えない。
5・本末転倒しているかもしれないが、インビザライン矯正と言えども、ワイヤー&ブラケット矯正を治療の一時期
  行う必要がある場合がある事を予めご理解いただきたい。
  併用することで、インビザラインの苦手部分をカバーし、より良い治療ゴール、治療期間の短縮になる。

以上のことを踏まえ、審美性、装着感、口内炎の発生頻度、歯牙の痛み、違和感、清掃性、虫歯の発生率が低いなどのアドバンテージが既存の矯正治療システムに対してあり、今後も改良され、ブラッシュアップしていくと思われる。
ディスアドバンテージとして、そもそもアメリカで開発されたシステムであるため、患者のデータ分析のアルゴリズムが
欧米人ベースであると思われること(ここはアライン社は明言していないが。)、微細な調整が困難なこと(対応策はあるのでご安心を。しかし、既存の矯正治療知識、技術がないとお手上げとなるので、それらを有しない歯科医が手がけるとろくな事にならない。)、そして前述のとおり患者自身が着脱可能なため、装着方法、時間などを順守しないなど非協力的な患者には効果が出ないことなどである。

そして矯正治療における大前提。
歯科矯正治療は決して見かけの歯並びをキレイにすることではない。
咬合機能を獲得できていなければ、(全ての歯牙が咬合し、臼歯部におけるバーティカルストップの確立、前歯部のアンテリアカップリングならびにディスクルージョンの確立できている状態。)矯正治療成功とは言えないので誤解なきよう。
事実、ぱっと見た目の歯並びは良好で、特に患者さん自身歯並びを気にされているわけではなく、主訴は顎関節症で来院されても、精査後矯正治療を行うケースも多々ある。
矯正治療終わったものの前歯で蕎麦1本噛みきれない状態では本当に成功しているのはどうか?である。
(便宜抜歯行わない、顎切行わない、歯科医から最終的ゴールをある程度妥協ラインでとの説明が行われ、納得づくなら別であるが。)
以前に他医院で行った不適切な矯正治療が引き起こした顎関節症、歯周病、咬合崩壊の多いこと、多いこと、、、、。
もっとも、矯正治療後のフォローアップも行なわず、ほったらかしなのであるが。

インビザラインは良いシステムであるが、全て、何でもかんでもインビザラインで治療可能と言う歯科医は要注意であるし、インプラント同様、安直な治療応用でシステム自体の評価が下がることが懸念材料である。