2015.09.25患者力

医科では色々話題にはなるが、歯科での浸透はまだまだである「患者力」。
患者力・・・一度調べていただきたいが、正確な定義はないのだが、要は様々な情報に振り回されるのではなく、医者の言いなりになるのではなく、しかしプロの意見は謙虚に聞き、それらを元に自身疾患について自分で調べる努力を行い、理解し、的確な決断力を持ち、治療に自ら積極的になること。とでも言えようか。

しかしながら、こんな読めば当たり前と思えるようなことが当たり前でないのが現実。
近年の、歯科に限らず、医学の進歩により治療の選択肢が広がることはいいことなのであるが、全てが保険診療で認められているわけでもなく余計に混乱を招く。
さらに、残念ながら、お粗末なプロといいかげんな患者が絡まりあって、ドンドン悪い方向に進んでゆくのが現実。

先日も抜歯の必要があるのだが、ある重篤な全身疾患に罹患している患者さんが来院した。
残念ながら重篤であるにもかかわらず自身の全身状態の検査数値等は全く理解しておらず、主治医から処方された薬もきちんと服用していない事が判明し、とてもとても抜歯できるような状態ではないことが判明したので、まず、主治医に相談するよう話をしたのだが、私が直ぐに抜歯しないことにたいそう不満があるようで、色々押し問答あったが理解を得ることができなかったので、治療は中止とさせていただいた。
その後どうなったかは知らない。
同じような事がかなり昔にもあって、別のある患者は私の判断に納得できず他医院で抜歯を決行し、大変な問題が発生したとの情報を風の便りに聞いた。
また別件で、何年もの長期にわたり、理由なく入れ歯が壊れたのを自分で瞬間接着剤で修理繰り返し、（そもそもアクリル系瞬間接着剤で入れ歯は接着できない）カピカピになった状態で来院、歯槽骨の吸収激しく、通常の入れ歯で補綴することが不可能な状態の患者もいた。
強固に言い続けた、放置した患者自身の責任なのか？、深く考察せずに治療を断行した歯科医の責任なのか？どっちもどっちである。
まあ、私にはどうでもいいことであるが。

こんなのは一例であるが、とにかく高度な治療を希望されるのなら「患者力」を上げていただきたい。
簡単な治療だから先送り、痛みがないから当分いいやと素人判断すると、取り返しのつかないしっぺ返しを喰らうのはあなた自身である。
全ての結果には必ず原因が存在する。
理論だって原因を探り、推論、分析し、それに基づいた治療計画を立案し、原因を排除しながら治療を進めてゆく。
そこには適当ということは存在しない。
治療をプラモデルのごとく簡単に考える患者、いや、歯科医もいるが、そのような事は決してない。
患者自身も思慮深くなっていただきたい。
よく理解もせず、できずに無理して高度な治療をコストと期間をかけて行っても結局無駄になる可能性が高いので、
そのような患者に対し私は治療の押し売りは一切しないし、そこまでの治療を希望されないなら他医院を受診されることをお勧めしたりもする。

スタッフも含め我々はあなたの口腔状況が良くなるように、そして良くなった口腔環境が維持できるよう、一生懸命なのであるが、当の本人の理解、意識が低ければ空回りするばかり。
あなた自身が自分の事を真剣に考え、行動しないなら、我々はそれ以上には動けないし、あえて言わしてもらうなら、
「どううでもいい事。」。
そのエネルギーをもっと他の真面目な患者さんに向けたいと思う。