医療法人一元会 松井山手西川歯科医院 ペリオ・インプラントクリニック インビザライン矯正

2015.09.10FOP

日本の歯科医が言っているFOPすなわちFlap Operationというのはフラップ形成すなわち歯肉の翻転をを伴う歯周外科処置全般を指す総称であり、世界的にはテクニカルタームとして通用しない。
目的、切開線の入れ方、歯肉剥離の方法、歯槽骨の処理の有無・方法、骨、軟組織再生療法を伴うのか否か、翻転した歯肉を縫合する位置、方法、etc・・・様々な方法があり、さらには術者の各症例に対する工夫も加わったりして様々な方法があるが、症例に応じて適宜使い分ける。
歯周外科処置を行うにあたってはこれまた膨大な器具、機材(ざっと勘定して、抜歯関係を除外しても100種類以上あった。)を用意する必要もあるが、日常的に歯周外科治療を行っていない歯科医院ではそこまで準備することはコスト的にも無理だと思う・・・だから一般患者にアピールしやすい何に使ってるのか、使いこなしているのか分からないマイクロスコープとかレーザーなどをご自慢されるのだろうけれど。
日本において一般に、保険診療的にFOPを指す意味はポケットリダクションを主たる目的としたModefied Widman Flap Operationが一番近いかもしれないが、前述のように様々な目的に応じて多数の方法が存在するので、単純にFOPとは言えない。
本症例は全学的に重篤な歯周病に罹患している患者さんのケース。
写真は右下部であるが、全額的に歯周外科処置を行っている。
中長期的に予後不良が予測される歯牙が多数あるのだが、今回は現状で保存不可能な歯牙は抜歯しインプラント治療、その他はできるだけ保存処置行い、将来のインプラント治療に向けて時間稼ぎを行おうということになった。
したがって治療計画も長期的なものを立案している。
初期治療を終え、とりあえずの炎症は軽減しているが、プロービング値は深く、初期治療時のルートプレーニング時、
一部の歯牙に縁下歯石が強固に付着していることが確認されたため、盲目的なルートプレーニングを行わず、早期に歯周外科処置に移行した。
術前(初期治療終了時)
DSC_4572.JPG
歯周外科処置中。マイクロスコープを通しての写真。
DSC_4574.JPG
歯肉を翻転すると深い位置に縁下歯石が大量に付着している。また、写真からは分かりづらいが、壊死セメント質に歯根は覆われており、歯牙の周囲には炎症性肉芽組織(組織学的にはともかく)が存在しているため、明視野下で徹底的に郭清処置した。
この後、歯根面を薬液処理し、縫合する。
通常、熟練した術者が丁寧にルートプレーニングを行っても、歯周ポケットプロービング値が4mmを超えると極端な取り残しが起こり、特に臼歯部のような複雑な歯根形態をしているとさらに取り残しが起きる。
中途半端なルートプレーニングを行っても縁下歯石、壊死セメント質が残存し、その上部の郭清できた歯根面のみみかけの治癒、上皮の再付着による治癒が起こり、炎症性の滲出液、膿が出どころを失い、深部で炎症が進行して大きく腫れたり、その時に周囲歯槽骨の大きな破壊が起きたりするため、今回は最初から歯周外科処置を計画していたので、ルートプレーニングで深追いをしていない。
日本人成人の80%以上は歯周病に罹患しており(ただし、地域差が大きいが)、その中の半分くらいは重度歯周病に罹患している。