2015.08.11インプラントスクリュー破損
膨大な数のインプラント治療を行っていると極稀ではあるがトラブルにも遭遇する。
本ケースはインプラントスクリューが破折したケース。
患者は再三の勧告にも関わらず、ナイトガードの使用がいいかげんになっていた。
今までに2ケース遭遇したが、分母が膨大なので発生率が極々微小ではある。
スクリューヘッドの少し下で破折していた。
このような状況で使用するメーカー純正の除去キットも存在するが、一筋縄でいかないことも多い。
本ケースも単純に超音波スケーラーでの振動、除去キット使用では上手くいかなかった。
下手な操作を行うとインプラントフィクスチャー自体を傷つけてしまい、パーにしてしまう危険もある。
(以前、他医院でインプラントフィクスチュアーを傷つけられ、インプラント再埋入を言われた患者さんが来院したことがあった。)
アバットメントを削合し、インプラントスクリューヘッドも削合し、スクリュー上面にマイナスの切込みを入れるとマイナスのドライバーを嵌入させることができ、除去できた。
今までに2本遭遇しているが、除去キットと様々な「知恵」を使って問題なく除去でき、新たに上部構造を作製して問題なく経過している。
「知恵」というのも大事であり、折れ込んだネジがなぜ除去困難なのか、どういう状態になっていて、どういうふうにインプラントフィクスチャー、アバットメント、スクリューの構造がなっているかを熟知しているのは勿論、どうすれば除去できるのかは歯科の学術的知識とは別の基本的なネジの構造、工作技術、器用さが要求される。
全てマイクロスコープ下での作業となる。
上が正常なスクリュー、下が撤去したもの。
本症例はマイクロスコープを使用している。
昨今、マイクロスコープ完備とうたう歯科医院もチラホラ見られるが、以前にも記したとおり宝の持ち腐れ状態になっていることが多い。
そもそも当医院も使用しているマイクロスコープのトップブランドであるカール・ツァイス社製のものなど歯科用には1年間に日本国内において150台位しか販売されないので、歯科医院への普及率も本当のところ本当のところは大したことはないのかもしれない。
マイクロスコープは言うの及ばず、これらの高度な医療機器は機器云々ではなくそれをいかに使いこなせるか、使い手の技術に負うところが大きく、おそらく80%以上は術者にかかっているということだ。
あるマイクロスコープ販売メーカーの営業の話だが、ハッタリ目的で購入する歯科医院も多いらしいが、本当にマイクロスコープを使いこなしているかどうかは診療室のある部分を見ればわかるのだけれど、それは大人げないので敢えて書かないでおこう。
さらに周辺機器も一式揃えないと本来のパフォーマンスを発揮できるわけでもなく(ピンセット1本10万以上、その他数十種類は必要。)、トレーニングも必要で膨大な時間とコストがかかるので、マイクロスコープ完備ということが即高度な治療可能ということにはならない。
当然、その治療コストは患者さんにご負担いただくことになるのだが(多くは保険外診療)、そもそもそのような需要のない歯科医院が装備してもこれまた意味が無い。
"有次"や"ヘンケル"の包丁を買い揃えたとこで絶品の料理が作れるわけでは決してない。
しかし、逆は真ではなく、美味しい刺身を食べようと思うなら食材は言うに及ばず切れ味するどい包丁でスパッと切らないいけず、弘法筆を選ばずというのはプロの世界には通用しない。
歯科医院が終始道具自慢のみ明け暮れるのは勝手、さも高度な診療を行っているように見せかけるパフォーマンス行うのも勝手、また、患者が歯科医院にマイクロスコープなどが置いてあるとさも高度な治療を行っているのだろうと考えるのも勝手だが内容が伴わないと次元の低い話になる。
私には関係のない話であるが。
マイクロスコープを使用してどこまで微細で精緻な治療を行っているのか聞いてみればよい。
歯を形成した歯型、模型や根管治療の術前、術後のレントゲン写真を見せてもらえばよい。
そこに明らかな肉眼的エラーがあるなら、マイクロスコープを使用している意味はない。
高度な機器は学術的バックボーンを元に使いこなしてナンボである。
色々問題が報道されている内視鏡治療や移植治療と同じである。