医療法人一元会 松井山手西川歯科医院 ペリオ・インプラントクリニック インビザライン矯正

2014.11.21骨移植・骨再生 その2

歯周病が進行し、骨が吸収されると歯牙が保存できなくなる。
また、そのような状態の部位にはインプラント処置もできなくなることもある。
このような場合、骨を再生させたり、移植することにより歯牙を安定させたり、インプラント治療が可能になったりする。
ご自身の歯牙周囲の骨再生は現実的に制約が多く、困難なことが多いのだが、インプラント治療に併用する形での骨再生・骨移植は、他医院で骨がないからインプラントできないと言われて相談に来られる方も多いので、当医院ではよく行う。
自分自身の骨が移植できればそれに越したことないのだが、残念ながら採取出来る量には限りがあり、また、手術が大掛かりになって、大変痛みを伴うことも多し(以前は整形外科医と協力し、腰から骨をとったりもした)、そもそも日本人は骨の質が欧米人と比較すると薄くて密度も低いので、やはり限界がある。
そこで、一般的には人工骨を使用することが多い。
人工骨は大別すると、他動物由来のもの(もちろん完全に消毒、脱タンパク質されている。牛由来のものが多い。珊瑚由来のものもある。)、人由来のもの(他動物同様の処理がされている。私は使用しない。)、化学合成されたもの(βTCP、アパタイトなど。)がある。
確実な手技でオペが行われると、臨床成績に差はないとされていたが、その後の様々な研究でβTCPは中、長期的な吸収がやや大きく、アパタイト単独では予後が他のマテリアルと比較して悪いというデータが出揃った。
そのような理由から、私はケース・バイ・ケースだが、主にBioss(牛骨由来)単独、もしくは、βTCP、ご自身の骨をミックスして使用することが多い。レントゲン造影性を期待して極少量のアパタイトを混合することも稀ではあるが行う。
中等度以上の欠損に対しては単に人工骨を押し込んだら再生するというものではなく、メンブレン、チタンメッシュ、それを固定するピン、ミニインプラント等を併用し、再生させるだけのスペースを確保する必要な場合もある。
インプラント治療も術前にいくら厳格にシュミレーション行っても、実際にオペを始めると骨の欠損が予測より大きかったり、幅、厚みが不足していることもあるが、前述の手技、マテリアルを駆使し、臨機応変なる対応をしなければならない。
ただ単なるインプラント治療程度ができても、このような対応ができないと、それが本当の意味でインプラント治療を行っていると言えるのかは疑問であり、骨のマネージメントができないと、単純に、何も考えずに埋入しやすい部位に埋入することになるのだが、現在、インプラント治療は補綴主導型、すなわち上部構造の位置を咬合学的見地など複雑な要素を踏まえたうえで先に決定し、その上部構造を支えるための理想的な位置にインプラントを埋入するという考え方が主流であるが、今流行りのコンピューターシミュレーションではまだまだ咬合などの要素に対応しているとは言いがたく、
原始的な診断用ワクシングアップに頼ることもある。
理想的な位置といっても解剖学的制約は除いて、ピンポイントではなくある程度の許容範囲はあるのだが。
このあたりは今話題のiPS細胞を臨床応用し、患者自身の骨を大量に作り出せれば(実験的には成功している)歯科の臨床は大きく変わると思うのだが、現実問題として、コスト的に厳しいだろう。
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写真は┗567骨移植(サイナスリフト)。
抜歯時に1回目の大規模サイナスリフト(バーティカル法)、インプラント埋入時に2回目の小規模サイナスリフト(ソケットリフト)行い、現在治癒待ち。
使用インプラントはAstra tech。