医療法人一元会 松井山手西川歯科医院 ペリオ・インプラントクリニック インビザライン矯正

2014.11.05咬合のはなし1

治療において、その内容にヒエラルキーはないのであるが、何が一番大事かと言われれば咬合だと私は思う。
しかし、その咬合が一番おざなりにされているとも思う。
インプラントも単に埋入オペだけならば、歯周外科処置ならびに少々難しい抜歯が手際よく、かつ、突発事項に遭遇しても対処出来るだけの引き出しをもっていれば(言うのは簡単、なかなか難しいが)手術自体はできると思う。
しかしそれだけではダメなのである。
補綴主導型のインプラント治療が言われて久しいが、上部構造体をどの位置に持ってきて、どのような咬合を確立させなければならないかの考えなしにインプラント治療は成立し得ない。
そうでないと、単に埋まっているだけに成り下がるし、そのようなインプラントは単に飾りである。いや、為害作用のみ出て飾りにすらならない。
確かに致し方ないケースもあるのだが、全くそのような考察なしに前歯が空いたま、不安定な咬合治療、補綴治療、矯正治療が行われると、時間経過とともに歯周病の増悪とともに歯並びが崩れたり、顎関節症が発症する。
このような症例に本当に多く遭遇する。
(矯正治療は治療終了後の定期チェック、リテーナーの使用を怠り、後戻り起こしているケースにも多く遭遇するが、これは患者の見通しの甘さからくる自身の責任であり、別問題である。)
そこで、歯科治療の要と私は考える咬合についてお話したいと思う。
正直、咬合があやふやな状態で、インプラントや審美歯科など言っても始まらないのだが、先に述べたとおり、残念ながら咬合が一番おざなりなのが現状だ。
講習会なども、インプラントや審美歯科は盛況だが、咬合は人気無いとも聞く。
なぜなら直接的にお金にならないからと、おかしな補綴治療や矯正治療を行っても、問題発生するのは何年も先の話であることも多く、患者も過去の治療が原因とは全く思わないから。
まず、咬合器の話。
IMG_0733.JPG
顎の動きを再現するために使用する。
下顎は単純にパクパク上下運動を繰り返すのではなく、左右、時には前後に3次元的に複雑な動きをする。
写真はパナデント社製半調節咬合器とフェイスボウ。
下顎の運動を再現する機器。
咬合器にも色々あり、一般的にはもっと簡単なものを使うことが多いだろうが、
複雑な治療を行おうとすれば、最低、このような咬合器が必要となる。
フェイスボウを用いて模型を咬合器にマウントする。
両耳の穴に器具を挿入し、顔の周りに枠みたいなものを設置して上顎骨に対する下顎骨の位置を決定する。
過去に様々な咬合器を使用してきたが、人間の体はこのような機器で完全に再現できるほど単純ではない。
調節機構をさらに多数備えた複雑な咬合器も存在し、咬合器マニアの先生も多いが、私の経験ではどこまでいっても限界があり、複雑な咬合器を使用すれば使用するほどパラメータに振り回され、結果、精密な治療ができるというものでもないように思う。
生体を規格化するのには無理がある。
吊るしのスーツと仮縫い付きフルオーダースーツのフィットの違いと言えよう。
なぜなら、咬合器は金属、プラスチックでできており剛性が高いが、人間の体は骨といえどもたわむし、
そもそも下顎骨は上顎骨にがっちり食い込んでいるわけではなく、周囲の筋肉、組織、関節組織を介して上顎骨からいわばぶら下がっているだけなので、ある意味非常に不安定なのである。
なので、下顎骨はサスペンデッドボーンとも言う。
咬合器は非常に重要。
最新医療機器、CT、レーザーとかご自慢の医院も多いけれど、案外咬合器は安モンの平線咬合器だったりしてね?